IEEE802.11ahとは?5つの特徴や製品化の時期、活用する具体的なメリット 3分でわかる!無線LANミニ知識
920MHz帯の周波数を利用する通信手段として、IEEE802.11ahと呼ばれるWi-Fiの次世代通信規格が誕生しました。従来のWi-Fiと比較して、省電力による稼働および、より広範囲にわたる通信が可能です。海外ではすでに製品化が進んでいますが、日本国内においては推進協議会が2018年に発足し、今後もさらに製品化に向けて、開発および普及が急速に進んでいくものと思われます。次世代通信規格と聞くと、専門的な分野で用いられると思われがちですが、実際は多くの人にとって、非常に身近な場所において活用されることがほとんどです。
IEEE802.11ahとは?
IEEE802.11ahとは、Wi-Fiの新しい規格の種類を指します。別名で「Wi-Fi HaLow™(ワイファイ ヘイロー)」と呼ばれ、1GHz未満(920MHz帯)の周波数を利用する通信システム(LPWA)の1つです。LPWAは「Low Power Wide Area」の略で、消費電力を抑えて長距離の通信を実現する通信方式のことを指します。家電製品や家具など、あらゆるモノがインターネットに接続される仕組み「IoT」をより広く普及させるための手段として期待されています。
また無線LANとWi-Fiは、よく同じ意味合いとして使われることが多いですが、厳密には異なります。以下の記事において詳しく説明しているため、あわせてご覧ください。
IEEE802.11ahの製品化はいつ?
海外では既に対応製品が販売されていますが、日本国内における製品開発も積極的に進められており、2022年9月に国内利用がはじめて認可されました。また製品として一般的に販売するには、技術基準適合証明が必要です。技術基準適合証明とは、総務省令で定める無線局(特定無線設備)の使用にあたって電波法令の技術基準に適合していることを証明するもので、技適と略して呼ばれることもあります。
証明を受けている企業はまだ少なく、国内で初めて802.11ahの技術基準適合証明を取得したのは株式会社フルノシステムズであり、2023年に対応製品の一般販売が開始されました。
IEEE 802.11ahに対する期待は?
次世代のWi-Fi通信規格であるIEEE 802.11ahは、特にIoT向けの通信システムとしての有効活用が期待されています。例えば、工場の製造機器、自動車といったモノの遠隔による操作や管理などがあります。
IoTが普及し実現できることが増え、社会課題の解決手段の選択肢拡大や、利便性向上に寄与することが想定されます。スマートフォンやAIスピーカーを駆使して家電や自宅内の設備を制御するスマートホームや、各家庭の太陽光発電における電力情報を収集し、供給バランスを効率よく管理するバーチャルパワープラントなど、IoTを活用したシステムがすでに実装されており、私たちの暮らしを支えています。
IEEE802.11ahの特徴・従来の規格との違い
IEEE802.11ahは、Sub-GHzと呼ばれる1GHz以下の周波数帯使って通信を行う次世代通信規格です。そのため、従来の通信規格と比較すると、柔軟な帯域における通信や、省電力かつ長距離通信が可能になりました。
伝送距離が大幅に伸長される
IEEE802.11ahは、1GHz以下の920MHz帯の周波数帯域を用いるため、約1kmの長距離通信が可能となりました。さらに、壁や障害などがある場合に後ろへ回り込むことができるため、通信可能な範囲が拡大されます。
これまで、広いエリアにおいて通信環境を構築するためには、LPWAと呼ばれる無線通信規格が利用されていました。しかし、LPWAはあくまでIoTの通信にのみ特化しているため、通信速度が遅く、Wi-Fiのような大容量のデータ通信を行いたい場合には不向きでした。
一方、今回のIEEE802.11ahは通信速度が速く、かつ伝送距離が大幅に伸びたため、LPWAとWi-Fi双方のメリットが搭載された通信規格といえるでしょう。またこれらの特長を生かし、町や市内全体をカバーできるインターネット通信サービスの提供や、公共の場において設置された監視カメラから、リアルタイムで動画の共有が可能になるなど、広い範囲にわたるIoT活用が期待できます。
消費電力の省力化が期待できる
IEEE802.11ahは、従来のWi-Fiの通信規格に比べて省電力での稼働が可能となりました。そのため電池で稼働するような、使用できる電力がある程度制限された機器における通信にも役立つでしょう。また多様なスリープモードの活用により、複数年の電池寿命の実現が期待されています。
従来のWi-Fiへシームレスに接続できる
IEEE802.11ahは、従来のWi-Fiと同様にTCP/IPを利用したIP通信が可能、かつBLE(Bluetooth Low Energy)やWPA3セキュリティプロトコルへの対応など、通信可能な帯域が幅広く、柔軟に対応できます。
そのためセンサーデータと監視カメラの画像を同時に送信するなど、画像や映像の送受信にも活用できます。本来ならば、通信規格が変更されるたびに既存の機器が使用できなくなり、対応する新しい機器を導入する必要がありました。一方、IEEE802.11ahが通信できる帯域は非常に幅広いため、これまで使用していた機器やシステムもこれまで通り利用できます。AHPC 802.11ah推進協議会が、IEEE802.11ahの技術と実力を測るために集合住宅や果樹園、海上において実証試験を行いました。
以下の資料にて詳しく説明しているため、あわせてご覧ください。
「802.11ahの技術と実力、制度化状況」(AHPC 802.11ah推進協議会)
IEEE802.11ahを活用する具体的なメリット
IEEE802.11ahの技術を身近に感じてもらうため、オフィスにおける活用ポイントやメリットを解説していきます。
監視カメラなどのセキュリティインフラの強化につながる
企業ビルやオフィス内に設置された監視カメラは、従来のWi-Fiを使用して動かしているため、壁などの遮断物が多いビル内では通信性能が低下し、ほかの家電製品の電波干渉を受けやすいというデメリットがありました。また電波に精通した人物なら、監視カメラの電波妨害も可能でしょう。
さらに重大なデメリットとして、ローカルにおけるバックアップが常時必要だという点があります。つまり、必要時にバックアップが行われていなかった場合、映像が残らず、重大な証拠が残せない可能性があります。802.11ahを使用することで、省電力による稼働に加えて安定した通信および遮断物による影響が受けにくくなり、広範囲にわたって監視カメラの通信が可能になります。そのため、セキュリティインフラを強化したい場合などに効果的です。
設置するアクセスポイントを集約させやすくなる
IEEE802.11ahは広範囲にわたる通信が可能で、約1km先の端末にもアクセスできます。つまり、広範囲にわたって通信環境を整備する場合でも、かなり少量のアクセスポイントの設置のみで済みます。
そのため、オフィス全体をカバーするほどの通信環境構築のために、これまで設置していた大量のアクセスポイントおよび中継器がほぼ不要になります。不要になれば、端末の管理における手間や設置する箇所の確保におけるコストの大幅な軽減が期待できるでしょう。
プリンタやスキャナなどのIP機器の設置が容易になる可能性がある
オフィスにとって欠かせないプリンタやスキャナも、従来の通信では通信範囲が限られていたため、設置場所に工夫が必要でした。
IEEE802.11ahの導入で広範囲にわたる通信が可能になることで、オフィスフォンやプリンタなどのネットワーク機器が、場所を選ばずに設置できるようになります。またこれまで通信が不安定になりがちだったために接続不良がしばしば起こっていたネットワーク機器も、ストレスなく扱えるようになるでしょう。
IEEE802.11ahの特徴および今後の動向やさまざまなユースケースについて、以下の資料で詳しく説明しています。あわせてご覧ください。
「IEEE 802.11ah紹介資料」(AHPC 802.11ah推進協議会)
IEEE802.11ahは省電力かつ広範囲のWi-Fi次世代通信規格
Wi-Fiの次世代通信規格であるIEEE802.11ahは、省電力による稼働および長距離にわたる通信を可能にしました。これらの特長を活かすことで、公共エリアやオフィス内のインターネット環境の構築および監視カメラへのセキュリティ強化などに役立てられることが期待されています。
海外ではすでに製品化が進んでおり、日本も随時開発および現場検証が行われている段階です。しかしそのような中、国内で初めてIEEE802.11ahの技術基準適合証明を取得した株式会社フルノシステムズより、次世代型無線LAN機器「ACERA 330」を開発し、販売しています。
無線LAN機器の設定はわかりにくく、専門家でなければ設定できないような機器がほとんどです。しかしACERA 330は、だれでも直感で操作できるよう、独自開発した分かりやすいソフトウェアが組み込まれています。また当社は、日本国内に本社を構える通信機器の専門集団です。サポート体制および機器の品質やセキュリティの高さに、多くの導入企業様から好評をいただいております。
製品について、以下のサイトで詳しく説明しています。導入を検討している人は、ぜひご覧ください。