LPWA(LPWAN)とは?種類の比較やメリット・デメリット、活用事例 3分でわかる!無線LANミニ知識
LPWAは省電力で長距離間の通信サービスを可能にする目的で、開発された無線通信技術です。昨今ではIoT機器が急速に普及し、ビル内の監視カメラだけではなく病院で使用する医療機器や畑、工事現場などさまざまな分野において運用されています。
また今後も、データの活用による作業の効率化や人材不足の解消に伴い、IoT機器含む人を介さない機器間の接続(M2M)が急増する可能性があります。LPWAの導入により実現できることをあらかじめ把握することで、現在の職場や現場で抱えている課題の解決の糸口が見つかるかもしれません。
LPWAの概要
LPWAは「Low Power Wide Area」の略で、省電力かつ長距離伝送を可能とする無線通信規格のことです。2GHz以上の周波数が用いられた従来のWi-Fiとは異なり、1GHz未満(920MHz帯)の通信で、別名は「LPWAN(Low Power Wide Area Network)」と呼ばれています。
異なる周波数を用いることで通信にどのような影響をおよぼすのかは以下の記事で詳しく説明しているため、併せてご覧ください。
LPWAの特徴【メリット・デメリット】
・広域かつ遠距離での通信が実現しやすい
LPWAは低速なナローバンド(狭帯域)を利用するため、数kmから数十kmを超える長距離における電波の送受信が可能です。実際、従来のWi-FiやBluetoothといった通信規格の通信距離は数十m~数百m程度と短いため、LPWAの通信可能距離がいかに長距離であるかがわかるでしょう。
また低速なナローバンド(狭帯域)は、特別な免許の取得が不要な上に伝送距離が長いため、IoTに活用するデバイスや装置の遠隔による操作・監視が安定しやすくなります。
・消費電力を抑えやすい
LPWAは従来の通信技術と比較して、非常に少ない量の電力で稼働させることができます。そのため設置場所における通信コストを大きく下げられる上に、長時間稼働させられます。
・通信速度が遅くなりやすい
LPWAのデメリットはWi-Fiや携帯端末の通信規格(5G、LTE)など、従来の通信技術と比べて通信速度が遅い点が挙げられます。なぜならLPWAは広域にわたる通信を可能にするために、データの情報伝達における仕組みが単純化されているためです。一方、データのリアルタイム送信や動画のダウンロードといった大容量のデータ通信には不向きです。
LPWAが注目されている理由
現在LPWAは、低消費電力やカバーエリアの広さから、さまざまな分野でのIoT化に役立つと大きな注目を集めています。「さまざまな分野」には、防災や介護、農業、交通、住居なども含まれており、実際に世界のLPWAの出荷台数は、2020年時点で1.2億台を突破しています。さらに2022年は2.1億台、2023年は2.8億台の出荷台数が予測されています。
LPWAの種類【各規格の比較】
LPWAには、無線局の免許・登録が必要ない「アンライセンスバンド」と無線局の免許・登録が必要である「ライセンスバンド」の2種類があり、それぞれ用途ごとに使い分けます。
アンライセンスバンド
通常、無線通信を行う際には区画ごとに基地局を設置する必要があります。一方、アンライセンスバンドは基地局が不要の「非セルラー方式」とも呼ばれる無線通信技術です。長距離通信に適した周波数帯域を利用するほか、国際電気通信連合(ITU)が定めた無線局免許が不要のため、比較的広範囲にわたる通信が求められるWi-Fiサービスに利用されます。
ライセンスバンド
一方で国際電気通信連合(ITU)が定めた無線局免許が必要な規格がライセンスバンドです。免許の取得は非常に手間がかかるため、一部の携帯キャリア会社のみ取り扱っているLTEの周波数を利用したLPWAです。ただし、通信モジュールやデバイス間の通信を可能にするための、ゲートウェイの設置が不要です。
【各規格の仕様比較表】
LPWAの種類 |
アンライセンスバンド |
ライセンスバンド |
||||
LPWAの規格 |
Sigfox |
LoRaWAN |
ELTRES |
ZETA |
LTE-M |
NB-IoT |
ネットワーク種別 |
公衆網 |
自営網 公衆網 |
公衆網 |
自営網 |
公衆網 |
公衆網 |
周波数帯 |
920MHz |
920MHz |
920MHz |
920MHz |
1.4MHz |
180kHz |
通信速度 |
約100 bps |
約250 bps |
約80 bps |
約300~2.4kbps |
約300~375kbps |
約100 bps |
最大伝送距離 |
約50km |
約15km |
約100km |
約10km |
約10km |
約20km |
推進団体 |
(仏) Sigfox社 |
(米) LoRa Alliance社 |
(日) SONY社 |
(英)ZiFiSense社 |
3GPP |
3GPP |
LPWAの具体的な活用事例・実証実験
LPWAはすでに都市部だけではなく、地方の商業分野などにおいて、課題解決のための実証実験が進められています。具体的な導入事例の一部を紹介します。
農業における作業の負担軽減や盗難の防止につなげる取り組み
農業に携わる人の高齢化および人員不足、収穫直前の作物盗難の増加という背景から、LPWAの特性を活かした仕組みを構築することで、解決につなげる取り組みが行われています。実際に山梨市は、市の基幹事業である農業の課題解決に向けてLPWAを活用した自社無線ネットワーク基盤を構築しました。あらかじめ電源確保が困難な圃場の環境データを取得できるセンサーを設置することで、スマホやPCを通じて温度や湿度、照度、土壌温度などの数値を確認できます。
また小型の人感センサーが搭載された機器を圃場に設置することで、作業時間外における侵入者を検知した際は、関係者へメールが送信される仕組みになっています。当システムの導入により、夜間における見回りの負担が大幅に削減できます。さらに広範囲にわたって設置した罠に生き物による検知があった際に遠隔で通知されるシステムもすでに提供されており、鳥獣による作物被害を事前に防げます。
送迎バス運行状況の管理における取り組み
生徒を送迎するスクールバスが交通状況により遅延し、生徒をお待たせする場合がたびたび起こっていました。その際、悪天候時の場合でも生徒を長時間バス停で待たせてしまうといった事態の改善を背景に、LPWAを使用した送迎バス運行状況の管理に取り組みますんでいます。
実際に埼玉県は、(有)エイ・ケイ・システムのLPWA製品を用いて走行中のスクールバスを可視化することで、保護者や生徒の待ち時間を大幅に短縮できました。
具体的には、GPSが搭載された機器を送迎バス内に設置し、保護者のスマホから、バスの現在地がリアルタイムで確認できます。その結果、送迎バスが自宅付近に近づいてから外出すればよいため、悪天候や交通状況により保護者や子どもの待機時間が大幅に削減できました。
熟練技術の指導用システムの構築と評価
新潟県三条市の株式会社ものづくり学校は、職人による和包丁の研ぎ技術のデータ化と解析を繰り返すことで、LPWAを用いた若手包丁職人を育成するプログラムの開発に着手しています。
刃物の産地として有名な新潟県三条市では、安価な輸入品の増加および職人の後継者不足から、刃物の生産に関する技術の継承が危ぶまれるという背景がありました。そこで、包丁職人が包丁を研ぐ際の圧力・角度・速度・視点等のデータを複数のセンサーにより収集および解析し、職人の育成に役立てます。
センサーが収集したデータをLPWAおよび4G通信を用いて送信し、解析したデータをノウハウとして数値化し蓄積することで、若手包丁職人を効率よく育成できるプログラムの開発を進めました。
LPWAで通信コストの削減・業務の効率化が実現
LPWAは、省電力かつ長距離間におけるデータ通信を可能にする無線通信技術です。障害物の有無に関係なく、広範囲にわたり機器同士の通信が安価で行えるため、監視カメラによる遠距離監視やGPSを用いたデータ収集などに適しています。ただし通信速度は従来のWi-Fiや携帯端末の通信規格などと比較すると劣ります。そのため、IoT機器だけでなく容量が大きいデータのやり取りを行いたい場合は、LPWAと、最大伝送速度が高速になる5G回線などと組み合わせて環境を構築したほうがよいでしょう。
導入を検討する際は、「ACERA」をぜひご検討ください。ACERAは、LPWAの種類の1つ「802.11ah」の技術基準適合証明を国内で初めて取得した株式会社フルノシステムズがサービス提供する、高セキュリティかつ高い環境性能のソリューションです。今後もIoT機器の普及が進むことが想定されるため、将来を見通し、LPWAを用いた機器管理や通信の仕組みについて理解しておきましょう。
以下の記事において、「802.11ah」の特徴や活用するメリットについて詳しく説明しています。併せてご覧ください。
「802.11ahとは?5つの特徴や製品化の時期、活用するメリット」 はこちら。