介護のICTとは?メリットやよくある課題、企業・自治体の導入事例 3分でわかる!無線LANミニ知識

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幅広い介護事業所や訪問介護などのサービスにおける業務効率化、省力化、経費削減につながるとして注目されているのが「ICT」です。ICTを適切に活用できれば、多くの現場での課題解決を図ることが可能です。本記事ではICTの基本的な情報や介護・医療現場での活用事例、導入を検討する際に注意すべきポイントについて解説します。

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介護におけるICTとは

ICTとしばしば混同されるITIoTとの違いと、介護業界、現場におけるICTの立ち位置について解説します。いずれもICT活用においては必須の知識となるので、しっかりと理解しましょう。

そもそもICTとは

ICT(アイシーティー)とは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では一般的に「情報通信技術」と訳されます。ただの情報通信技術を指すだけでなく、技術を活用した情報共有(コミュニケーション)などの意味も包含します。身近なICTとしては、スマートフォンやタブレット端末と交通系ICカードとの連携、ECサイトでのオンライン決済、ATMなどが挙げられます。診療情報を医療機関内外で共有する電子カルテもICT1つであり、さまざまな分野で活用されています。

ICTITの違い
ITは「Information Technology(情報技術)」を指す用語です。ICTITの使い方に明確な定義はなく、省庁によっても使われ方が異なるケースがあります。一般的にはITはパソコンやスマートフォン端末といったハードウェアを含めたコンピュータ関連全般を指すことが多いです。一方、ICTITが指すハードウェア、ソフトウェアを使った「情報伝達」の仕組みや技術、方法論を指すことで使い分けられています。

ICTIoTの違い
IoTは「Internet of Things」の略称であり、「モノのインターネット」という意味です。その名のとおり、IoTは機器や端末といったモノをインターネットで介して接続し、遠隔操作などを行う仕組みを指します。ICTは「人とインターネット」をつないで、人と人、人とモノをつなぐというより広義の意味を持つと理解しましょう。IoTによってあらゆるモノがインターネットで接続されること(IoT)で、その所有者や利用者である人もつながる(ICT)というイメージです。

介護におけるICTとは

広い意味を持つICTですが、介護業界においては訪問介護や居宅介護支援事業所などの介護サービス事業所、社会福祉法人などの事務所業務に関わる情報伝達・連絡・通知などを支援するソフトウェア、もしくは通信環境の構築を指すのが一般的です。

例えば、手書きの介護記録などをデジタルで作成、管理できるようにしてペーパーレス化を実現できれば書類作成や必要な情報を探す労力と時間を削減できます。さらに介護現場で無線環境とタブレット端末を活用するなどして通信環境を整えれば、スムーズな情報連携やサービス提供、いつでもどこでも必要な介護情報にアクセスすることなどが可能になるため、業務の効率化につながるでしょう。

介護業界でICT導入が重要視される背景

少子高齢化により、要介護者・要支援者が増加する一方、介護業界の人手不足が深刻化しています。厚生労働省の「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2023年度では介護職員の必要数は約233万人、2040年度には約280万人に達すると予測されている一方、2019年時点では約211万人しかいません。現状の流れのままでは2040年には約69万人の介護職員不足が発生する恐れがあります。

介護従事者の人手不足の要因としては「募集しても応募者が少ない」「離職率が高い」ことなどが挙げられます。さらにその遠因としては介護職員の負担増大、職場環境によるサービス品質の低下が上げられます。身体的な負担だけでなく、心理的なストレスが一因で介護職員による高齢者の虐待が行われるケースもあり、業界全体のイメージ悪化も懸念されています。

そのため、ICTによって情報共有を円滑にして業務改善・制度改革を行うことで、負担軽減および離職率の低下につなげ、業界を希望するスタッフの増加・人員確保を図り、介護事業者の人手不足を解消につなげる必要性が高まっています。

【参照】「介護現場におけるICTの利用促進」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-ict.html

【参照】「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804129.pdf

介護領域でICTを導入するメリット・目的

ICTを導入することで事務作業などの介護業務の負担軽減が期待できます。例えば、入居者の体の状態に関わる情報を共有する「見守りシステム」を導入すれば、介護職員がリアルタイムで異変を把握しやすくなります。結果、夜間の見回り回数が減少し、捻出した時間を事務作業に充てることで効率的に業務をこなせます。結果、残業時間の削減につなげられるため、介護人材の離職率低下にも期待できます。
そのほか、厚生労働省の「令和元年度 ICT導入支援事業 実績報告まとめ」では、導入効果として、事業所分析の充実、勤務体制の改善、ヒューマンエラーの防止、支援の質向上、心理的負担の軽減、各記録に要する時間の削減、ケアプランの充実といった成果が挙がったと報告されています。

介護・医療におけるICTの導入事例するメリット

介護・医療業界のICTは国も後押ししており、さまざまな先進的な事例をとりまとめています。総務省の「ICT地域活性化ポータル」から、福岡市、福井県・石川県、京都府の3つの事例を紹介します。

福岡市による地域包括ケア情報プラットフォームの構築

福岡市地域包括ケア情報プラットフォームは、ビッグデータ活用によって「健康寿命の延伸」、「地域経済の活性化」、「行政コスト削減」を実現するために福岡県福岡市が実施した事業です。同市は医療・介護・住まいなどの生活支援サービスを一気通貫で提供できる「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。福岡市地域包括ケア情報プラットフォームは、データ集積システム、データ分析システム、在宅連携システム、情報提供システムの4つのシステムで構成される情報通信基盤です。医療、介護、検診のデータを住民情報に紐づけて管理・集約し、エリアごとに相関分析できる環境を構築しました。同プラットフォームを活用した結果、介護離職の減少、健康寿命の延伸という在宅ケアの充実を実現できており、高齢者の就業率が1%増加し、年36億円の経済効果を挙げています。

【出典】「福岡市地域包括ケア情報プラットフォーム」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/2017_019.html

福井県・石川県でのクラウド救急医療連携システムの活用

クラウド救急医療連携システムで実現する仮想医療圏の広域連携は、福井県勝山市、石川県加賀市、小松市が行った「ICT医療普及促進プロジェクト」です。救急搬送の現場から携帯型12誘導心電計を使用し、クラウドに救急画像を送信してクラウド上で広域連携するシステムの運用体制を構築するなど、病院到着後、90分以内に治療できる環境を実現しました。その結果、急性心筋梗塞発症による重篤化対策と医療費の低減に成功しています。

【出典】「ICTクラウド活用で急性心筋梗塞などの救命率をUP!」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/2017_088.html

京都府の「ポケットカルテ」「すこやか安心カード」

特定非営利活動法人日本サスティナブル・コミュニティー・センター(SCCJ)は、地域住民の医療履歴をクラウドで一元管理して効率的な受診を可能にすることを目的に「ポケットカルテ」、地域共通診察券「すこやか安心カード」というプロジェクトを実施しました。通常は医療機関ごとに管理されている住民の診療・投薬履歴を医療機関などが連携してクラウドで一元管理する体制を構築。さらに利用者がスマートフォンやケーブルテレビなどで確認、管理できるよう環境を整えました。その結果、地域住民が多様な端末から自己の医療履歴を無料で確認できるシステムを確立しています。

【出典】「「ポケットカルテ」及び地域共通診察券「すこやか安心カード」」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/2017_014.html

【出典】「ICT地域活性化ポータル 事業テーマ別 事例100選」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/index.html#result

介護でのICT導入のよくある課題・デメリット

介護業界、施設でICTを導入する際、ありがちな課題や注意すべきデメリットを理解して対策することが大切です。代表的な2つの課題・デメリットを紹介します。

ICTの導入や維持の費用が高くなるおそれがある

ICTを導入するには、インターネット環境の整備、機器・ソフトにはイニシャルコストと維持費(ランニングコスト)がかかります。予算は施設の規模やIT環境によって異なりますが、通信環境の整備には大きな費用が発生する可能性もあります。費用面の負担が懸念の場合、介護ロボットや見守りセンサーを導入するための費用の一部を補助する「介護ロボットの導入支援事業」、もしくは介護ソフトや各種端末が対象の「ICT導入支援事業」といった補助金の活用を検討することをおすすめします。各導入補助金の交付申請には必要な申請書類(交付申請書、実績報告書、事業計画書など)、提出期限、様式が決められているため事前に補助金交付要綱や記載例などを確認し、不明点は問い合わせておきましょう。

【出典】「介護分野におけるI CTの活用について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000958347.pdf

「介護ロボット導入支援事業」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000666690.pdf

情報漏えいに対する十分なリスク管理体制が求められる

ICTを導入する場合、各情報はデータとしてパソコン内やクラウドで保管するのが一般的です。そのため、アナログで保管する際は必要なかったウイルスなどのセキュリティ対策を実施する必要があります。さらに情報漏えいは内部の過失、故意によって起こる可能性もあるため、マニュアル作成やITリテラシー教育の実施なども求められるでしょう。

ICT活用で現場の改善を

介護業界のICTついて解説しました。ICTを活用できれば、生産性向上、提出書類のデータ化、データ連携の円滑化、経費・勤怠管理などの事務作業の省力化などさまざまな側面から、介護事業所の現場改善につなげられます。補助要件を満たすのが前提ですが、補助金交付を受けられれば、機器導入するハードルも下げられます。

ただし、事業所内に適切にネットワーク環境を構築しなければ、ICTを十分に活用できないことは留意しておきましょう。例えば、当社の業務用無線LANACERAシリーズ」は、多様な産業の施設において、安定した品質の通信を提供しています。また、医療・入院患者様向けの病室Wi-Fi「楽コール・システム」も、患者様のQOLの向上はもちろん、電子カルテ、見守りシステムにも活用されており、業務用として幅広いメリットを提供しています。介護業界でのICT導入を検討する際は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考リンク
https://www.furunosystems.co.jp/channel/medicalwifi/

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