介護におけるIoTとは?課題やメリット、補助金や企業の導入事例 3分でわかる!無線LANミニ知識

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人材不足や職員の負担など、介護業界をめぐる現場の課題は少なくありません。その解決策として期待されているのが「IoT」を活用した業務改善です。介護施設などの現場やバックオフィスにIoTを適切に導入することで、さまざまなメリットが得られる一方、介護の現場はアナログな環境が主流であるため、IoTに関する知識に基づいたしっかりとした計画の立案は必要不可欠といえるでしょう。そこで本記事ではIoTの基礎知識と介護業界に対するメリット、導入時の注意点について解説します。

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介護におけるIoTとは

IoTは介護業界のみならず、多くの産業で導入が活発になっています。IoTの基礎知識と介護業界における活用例を紹介します。

そもそもIoTとは

IoT(アイオーティー)は「Internet of Things」の略であり、一般的には「モノのインターネット」と称されています。自動車、電化製品、工場の製造機器といったあらゆるモノをインターネットに接続して、連携する仕組みを指します。IoTによって複数のモノを接続することができれば、遠隔でモノの状態を把握できるほか、操作することも可能になります。IoTを導入することで業務プロセスを改善、構築することを「IoT化」ともいい、一般的には作業効率化、省人化、ヒューマンエラーの防止、業務負担軽減、生産性の向上、情報収集などを目的に実施されることが多いです。

【参照】「(1IoTに関する取組(総務省)」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd245210.html

介護におけるIoTとは【活用例・種類】

IoTの導入は、インターネットと接続できるソフトウェア・ハードウェアが多いIT業界や製造業などで活発に実施されています。その裾野は広がり続けており、近年では介護領域でも活用例が増えています。複数の機器をネットワークで連携させることで、老人ホームといった介護事業所の「介護職員の負担軽減」や「介護サービスの質向上」を図るため手段として用いられるのが一般的です。

具体的な活用としては、ベッドなどにセンサーを取り付けることで高齢者の身体の異変をリアルタイムに感知し、緊急時には迅速に介護スタッフに通知して対処するための「見守りシステム」や、いつでも通知を確認できる「ウェアラブル端末」の導入が挙げられます。また、入居者に声かけするロボットのほか、事務作業を自動化できる管理システムを導入することで、介護記録などのバックオフィスの効率化を図るケースもあります。

介護業界でIoTが注目される背景

介護業界でIoTが注目されている大きな理由の1つが、少子高齢化によって介護施設を利用する高齢者が増加していることです。さらに介護業界の現場業務は体力、精神的に厳しいイメージもあり、人材不足が顕著になっているのも大きな課題といえるでしょう。
内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」によると、202210月現在の日本の65歳以上の人口は3,621万人で全人口に占める割合(高齢化率)は28.9%ということが明らかになっています。さらに同資料によると2065年の38.4%に達するまで、高齢化率は伸長し続けるという推計値も明示されているのです。
現在、既に人手不足による介護サービスの質の低下が懸念されているため、今後の介護業界の市場規模拡大に備えた現場の課題解決の必要性が高まっています。ただ、少子高齢社会では、働き手の人口増が期待できないため、従来の取り組みでは業務改善に対して大きなインパクトを得るのは困難です。そこでテクノロジーを活用し、介護業界の「働きやすさ」や「省力化」を実現することで離職率の低下、応募者増につなげる必要性が高まっているのです。

【出典】「令和4年版高齢社会白書(概要版)(PDF版) 第一章 高齢化の状況」(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/gaiyou/pdf/1s1s.pdf

介護にIoTを導入するメリット

介護現場にIoTを導入することで得られるメリットは「業務負担の軽減」を図りつつ「介護サービスの質向上」の実現につなげられることです。その結果、現場が働きやすくなり介護人材の「離職率」などが低下も期待できます。それぞれの詳細を以下で確認してください。

介護スタッフの業務負担を軽減できる可能性がある

介護事業所がIoTを導入する大きな目的の一つが、既存の介護職員の「業務負担軽減」です。介護現場では要介護者・要支援者に対して、食事介助、排泄介助、入浴支援、服薬支援といったさまざまな「身体介助」を行っています。さらに介護記録の作成や入居者家族とのコミュニケーション、緊急事態の迅速な対応なども求められます。IoTの導入によってすべてを自動化するのは不可能ですが、人の手が行き届かない部分をカバーするほか、各業務の一部をITツールなどに任せることができれば、結果的に業務全体の改善につなげられるでしょう。業務効率化が実現できれば、介護職員の身体的な負担だけでなく精神的・心理的な負担軽減にも期待できます。

例えば、入居型の介護施設では夜間を含めたケアを行う「見守り業務」があります。介護職員は夜間の事故を防ぐために定期的な巡回を行う必要があり、入居者の状態によっては些細な物音でも頻繁に確認作業しなければなりません。その心理的なストレスなどを軽減しながらも、いざというとき迅速に対応できる環境を構築につながるのが「センサー」の導入です。センサーは設置するモノや場所によって複数種類があります。

■介護施設で設けられているセンサーの種類(例)

・センサーマット
・ベッドセンサー
・クリップ型センサー
・マグネットセンサー
・画像、音センサー

センサーを設置すれば、事務室にいながら徘徊している入居者や異常を迅速に把握できます。そのため、翌日の準備や介護記録の作成に集中できる時間を確保しやすくなるでしょう。また、介助・支援と並行して行うケースが多い事務作業もソフトウェアなどを導入して効率化できれば、間接的に業務の負担軽減につなげられます。

介護サービスの品質向上につながる

介護事業所が提供する「介護サービスの品質」にはさまざまな考え方がありますが、一般的には入居者が希望する生活を実現するために適切なケアプランを策定し、実行することが求められます。IoTを導入することで情報を収集、管理しやすくなり、より効果的なケアプランを作成しやすくなるほか、介護職員の負担を軽減できれば、入居者一人ひとりに寄り添った支援、介助も可能になります。さらに入居者家族とのコミュニケーションコストが下がり、円滑に情報連携できるようになれば、対外的にも「介護サービスの品質が高まった」と評価を受けられやすくなるでしょう。

介護人材の離職率低下が期待できる

介護現場の負担軽減、労働環境を改善できれば、業務負担を理由とした離職を防止できます。20228月、公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和2年度 介護労働実態調査」によると、訪問介護員、介護職員、サービス提供責任者の3種の離職率は14.9%となっています。同時期の全産業の平均離職率が15.6%であるため、介護業界の離職率は特筆して高いわけではありませんが、業界全体のイメージ向上による希望者の増加も見込めるのも大きなメリットといえるでしょう。

【出典】「令和2年度「介護労働実態調査」結果の概要について 」(公益財団法人 介護労働安定センター)
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2021r01_chousa_kekka_gaiyou_0823.pdf

介護にIoTを導入する際のよくある課題

介護現場にIoTを導入する際、メリットを最大化するためにはよくある課題も把握して対策しておく必要があります。代表的な3つの注意点を解説します。

導入や維持の費用が膨らみやすい

IoTを導入するには、インターネット環境の整備のほか、機器・ソフトウェアにかかるイニシャルコストと運用する際に発生する維持費(ランニングコスト)が発生します。初期投資の金額によっては、費用対効果を考慮してIoT導入に踏み切れない事業者も少なくありません。
一方、介護業界のIoT化は国も後押ししており、介護ロボット(1機あたり最大100万円)と見守りセンサーのための通信環境整備(1事業者あたり最大700万円)の補助金を受け取れる「介護ロボットの導入支援事業」が設けられています。
さらに介護ソフトやタブレット端末、スマートフォン端末、インカムなどの導入を支援する「ICT導入支援事業」も実施されています。これらの補助金制度を適切に活用すれば、金銭的な負担を軽減しながら介護事業所のIoT化が図れます。

【出典】「介護分野におけるI CTの活用について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000958347.pdf

「介護ロボット導入支援事業」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000666690.pdf

IoTを活用するための人材確保・育成に苦戦する

IoTを適切に運用するためには、情報システムに関する知見とノウハウが少なからず求められます。そのため、新たに人材を確保するほか、既存の職員を担当者レベルになるまで育成しなければなりません。いずれにしても採用コストや教育コストが発生します。あらかじめ、IoTを導入後の適切な運用体制の構築にかかる期間とコストを計画しておくことが大切です。

個人情報漏えいのリスクを抱えることになる

介護記録といった個人情報を含む資料をデータで保存する場合、ウイルスなどの「外的要因」や職員の持ち出しといった「内的要因」で、漏えいしてしまうリスクが少なからず高まります。リスクを低減するには情報管理に関する職員のリテラシーの向上、マニュアル作成、ウイルス対策なども講じなければなりません。

介護のIoT化は導入機器、システムの適切な導入がカギ

介護業界のIoTをめぐる現状やメリットなどについて解説しました。介護業務のデジタル化を促進し、効率の向上といったメリットを最大化するには、環境に適したIoT機器やシステムの導入が欠かせません。例えば、当社の業務用無線LANACERAシリーズ」は、あらゆる状況下で安定した品質の通信を提供しています。医療・入院患者様向けの病室Wi-Fi「楽コール・システム」は、コロナ禍でなかなか家族に会えずに心理的に大きな負担を抱えた患者様のQOL向上を目的に提供。オンライン面会などを快適に行える環境づくりに成功したほか、電子カルテ、見守りシステムにも活用されており、業務用として幅広い活用方法があります。介護業界でのIoT導入を検討する際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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参考リンク
https://www.furunosystems.co.jp/channel/medicalwifi/