ICT教育とは?目的やメリット、デメリットや課題【実践事例付き】 3分でわかる!無線LANミニ知識

情報通信技術を活用した教育「ICT教育」は、GIGAスクール構想が始まった2019年以降注目を集めており、多くの小学校、中学校で導入が進んでいます。また、2023123日には「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」の2年間の延長が公表されるなど、国を挙げたICT教育の推進は継続されると予想されています。そこで今回は、今後、ますます注目が高まるICT教育の目的やメリットといった基礎知識などを、事例を用いて解説します。

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ICT教育とは

ICTのそのもの意味と、教育に利活用する「ICT教育」に関する基礎知識について、注目が高まっている背景と合わせて解説します。

そもそもICTとは

ICTは「Information and Communication Technology」の略であり、日本語では「情報通信技術」と訳されます。「情報の通信技術」という意味の「ITInformation Technology)」としばしば混同されますが、厳密にはITは情報通信技術そのものであり、ICTは情報の共有や活用といった「情報の使い方」を指す言葉とされています。
情報の使い方の代表的な例としては、交通系ICカードやスマホアプリでの飛行機の予約、ビデオ会議といったインターネットなどを介して行われるをやりとりの多くは、ICT技術が活用されています。また、民間企業においてもビジネスの現場でICTの導入が進んでおり、「コミュニケーションの円滑化」、「サービスの品質向上(顧客満足度の向上)」、「生産性、業務効率の向上」などを実現しています。

【参考】「令和3年度 文部科学白書/第11 ICTの活用の推進」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20220719-mxt_soseisk02-000024040_211.pdf

ICT教育の意味

ICT教育とは、パソコンやタブレット端末などを教育現場に導入して授業で活用する取り組みを指します。ICT教育を導入することで、従来のアナログな手法では実現が困難だった内容の授業が行えるほか、業務の効率化が図れます。
ICT教育は、教員や生徒が使用する端末だけではなく、無線LANWi-Fiなどを導入することで円滑にデバイスを利用できる環境「校内通信ネットワーク(校内LAN)」の構築が不可欠であることも覚えておきましょう。

ICT教育の具体例>

*黒板を電子黒板に変更する

*端末を利用してデザイン、イラスト、映像などを作成するメディアアート授業の導入

*オンラインストレージを活用した資料の管理、配布、提出

*生徒同士で資料を共有してグループ単位で課題解決を図る「協働学習」の実施

*映像、アニメーション、音声、Webサイトなどを授業に取り入れる

ICT教育が注目される背景

近年、教育業界でICT教育が注目されている大きな要因としては、文部科学省が推し進めている「GIGAスクール構想」が考えられます。GIGAは「Global and Innovation Gateway for All(全ての人のためのグローバルで革新的な入り口)」という意味で、子どもの学びの機会を公正に行き渡らせる教育によって「すべての子どもたちが個々の特性に適した創造性を育む」ことを目的とした取り組みのことです。
そのための重要な要素がICTであり、具体的には全国の学校に高速大容量の通信ネットワークを整備し、小中学生一人ひとりがデジタルデバイスを所有する学習環境を構築することが目的を達成するための土台として考えられているのです。

【参考】「GIGAスクール構想の実現へ」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf

【参考】「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/24/1418387_02.pdf

ICT教育を導入するメリット・目的

ICT教育を導入すれば、教員や学校と生徒の双方にメリットが得られます。そのなかでも代表的な「教員の負担軽減」、「生徒の学習効率の向上」、「生徒の主体性・モチベーション」について紹介します。

業務効率化による教師の負担軽減

人材不足や業務量の増加など、教員の働き方をめぐる課題は少なくありません。ICT教育を導入すれば、従来は口頭や書面で行っていた多様な校務をデジタル化してオンライン上で完結できるようになり、業務効率化が図れると期待されています。

例えば、授業で用いる資料をペーパーレス化できれば、一度作成した資料の加工、編集が簡単になります。さらにデジタルデバイスで出力することで、都度、印刷する時間はもちろん、板書の手間も少なくなるでしょう。加えて課題(宿題)やテストの配布、採点、提出状況の確認などもオンラインで行えます。アナログな環境では改善できる余地が少なかった校務も、ICT教育を導入してデジタル環境に変革できれば、さまざまな方向から業務効率化に取り組めるのです。

生徒の学習効率の向上

タブレット端末で利用できる動画や画像、音声といったコンテンツは、紙や黒板、教員の声よりも効率的な情報伝達が可能です。さらに個々の端末に学習の習熟状況が容易に把握できるため、生徒一人ひとりに合わせた学習指導も行いやすくなるでしょう。例えば、個々の習熟度に合わせて与える課題の内容を変えるほか、デジタル教材を使って間違いやすい問題を繰り返し提示して、苦手なポイントを重点的に学ばせることも可能です。

生徒の主体性・モチベーションの向上

対話的で主体的な教育を実践できるのがICT教育の大きなメリットの1つです。ICT教育を導入すれば、理科の授業などでデジタル教材を使ったシミュレーションができるほか、社会の授業では検索エンジンを使って自分で情報を収集するなど主体的に学べる環境を提供できます。そもそもタブレット端末などのデジタル機器に触れるだけでも、生徒の学習意欲や興味関心を高められると考えれます。さらに電子黒板にアニメーションを表示するなど、教員のアイデア次第で生徒の学習に対するモチベーションを引き出せる授業の幅が広がるのも、ICT教育を導入しなければ実現できない大きなメリットです。

ICT教育を導入するデメリット・注意点

ICT教育を導入する際、注意しなければならない点やデメリットが存在します。多くの学校に該当する代表的な2つのポイントを紹介します。

導入コスト・維持コストの発生

ICT教育を導入する際、ハード面とソフト面でイニシャルコスト、ランニングコストが発生します。ハード面ではパソコンやタブレット、電子黒板の購入費用。ソフト面ではICT教育用のデジタル教材の購入費が挙げられます。また、デバイスや端末のほかにも、校内通信ネットワークの構築に欠かせない無線LANWi-Fiの機器、校内サーバー、セキュリティソフトウェアなどICT教育の「裏側」のハード・ソフト面のコストが発生することも覚えておきましょう。
具体的な金額は学校の規模や導入する機器の種類、グレードによって異なるため、保守運用費を含めた十分な予算確保が求められます。加えて、故障、トラブルに伴う急な費用が必要になるケースにも十分に備えておかなければなりません。

通信トラブル発生のリスク

ICT教育には「端末の故障」、「情報漏えい」といった備えるべきリスクがたくさんありますが、授業やカリキュラムの進捗に大きな影響を与える可能性が高いのが「通信トラブル」です。無線LANなどで構築している校内通信ネットワークにトラブルが発生すると、端末が正常でも情報のやりとりができなくなる恐れがあります。
その結果、多くのクラスの授業に遅れが出るほか、学習効率が悪化するなどの悪影響が生じる恐れが考えられます。ネットワークが完全につながらなくなってしまうケースだけでなく、稀に不安定になってしまう状態でも同様です。校内通信ネットワークを構築する際は「安定した通信」を提供できる事業者の支援が欠かせません。

ICT教育の実践事例

同志社中学校では、GIGAスクール構想に先だつ2014年にはiPadMacBookを生徒全員が所持して学習する環境を整えています。さらに2019年はAppleが提供する教育機関向けプログラムを導入して、ICT教育の充実を図っています。2020年は端末だけでなく、ICT教育現場の基盤となる校内の無線LANをリニューアル。フルノシステムズが開発・提供している無線アクセスポイント「ACERA(アセラ)1210」を導入し、通信環境の高速化と安定性の向上を実現。授業で使用する動画コンテンツのダウンロードやオンライン授業による動画配信を滞りなく行える環境を整備しました。

参考リンク 教育現場におけるICT教育に必要なインターネット環境の構築事例

ICT教育について理解を深めましょう

プログラミング教育の必修化、情報活用能力やITリテラシー教育の必要性が高まるなど、高度な情報化社会に適した人材を育成するための「ICT教育」は公立、私立を問わず高等学校を含めた多くの教育機関にとって避けては通れない取り組みとなりつつあります。
新型コロナウイルス感染症の影響でGIGAスクール構想の目標期間が前倒しになった事例も考慮すると、教育機関の情報システムの担当者だけでなく、教員を含めた多くの関係者がICT教育について理解を深める必要性は高まっているのではないでしょうか。