メッシュWi-Fiとは?中継機との違いやメリット、主な利用シーン 3分でわかる!無線LANミニ知識

近年、テレワーク・リモートワークが普及してきたこともあり、有線接続ではない、無線によるネットワーク接続時の通信の安定性を向上させる「メッシュWi-Fi」が人気を集めています。メッシュWi-Fiとは、網の目状のメッシュネットワークを構築することによりWi-Fi(無線LAN)の死角をなくす方法のことで、快適な通信環境を実現できます。
この記事では、メッシュWi-Fiの定義、おすすめの利用シーン、導入時のメリット・デメリットについて解説します。

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メッシュWi-Fiの基礎知識

メッシュWi-Fiとは?

メッシュWi-Fiとは、広い範囲で安定した無線ネットワークを提供するために用いられるWi-Fiの通信形態のことです。この技術は、従来のWi-Fiルーターではカバーしきれない大規模なエリアや複雑な環境において、一貫した通信を実現するために採用されています。

メッシュWi-Fiの仕組みは、メインルーターと呼ばれる親機が、複数の子機(サテライトやエージェントとも呼ばれる)と連携する形です。網目(メッシュ)のようにWi-Fi電波を広げられるので、障害物を回避することも可能となっており、従来のWi-Fiと比べるとカバレッジに優れていると言えます。また、障害に強く安心感があるのも特徴の1つです。通信経路のどこかで障害が発生しても、障害箇所を迂回するなどして通常の通信環境を維持することができます。
なお、同じメッシュ機能対応ルーターでも商品によってスペックは異なります。選び方のコツとしては、下記の項目をチェックしておきましょう。

・本体のアンテナ数(多いほど速度低下が起きづらい)

・用途に適したコスパであるか

・回線の最大速度を左右するMbpsMega bit per second)はどれくらいか

・最新の通信規格であるIPv6に対応しているか

最後の通信規格に関して、IPv6はアクセスが集中する時間帯でも高速通信できる点が便利です。ただし、現在の主流はIPv4であり、IPv4アドレスとIPv6アドレスには互換性がないので、光回線もIPv6に対応しているか注意してください。その他、より通信の安定性を求めるならトライバンド対応モデルを選ぶと良いでしょう。トライバンドとは、2.4GHz2種類の5GHz、合計3つの周波数帯に対応した規格のことです。2つの周波数帯域に対応する従来のデュアルバンドは、接続機器が増えるほど回線が混雑するというデメリットがありましたが、トライバンドなら今後のIoTの進展にも対応できます。

メッシュWi-Fiと中継機の違い

メッシュWi-Fi 中継機
通信形態 複数のルーターが網目のように連携して1つのネットワークを形成する 既存のルーターからの電波を拡張する
接続先の切り替え 自動で適切なアクセスポイントに切り替わる 手動で切り替える必要がある場合がある
通信速度 複数のルーターで分散処理するので通信速度が落ちにくい 中継器を増やすと通信速度が低下しやすい
設定方法 同じSSIDをシェアするので、新たに設定する必要がない 中継器の数だけSSIDを設定する必要がある
コスト 中継器よりも高額になりやすい メッシュWi-Fiよりも比較的安価に抑えやすい

メッシュWi-Fiと中継機は、どちらもWi-Fiの通信エリアを拡張するための機器ですが、通信速度に関してはメッシュWi-Fiのほうが優れています。なぜならば、中継機には電波の強いルーターに自動的に切り替わる機能が搭載されていない一方で、メッシュWi-Fiは適切なアクセスポイントにシームレスで接続することができるからです。つまり、メッシュWi-Fiにはユーザーが移動するたびにSSIDを切り替えるといった手間がなく、常に快適なWi-Fi-通信が利用可能となっています。

また、メッシュWi-Fiの場合、子機を追加しても負荷が分散する仕組みなので、ネットワークの性能が維持され、通信速度が低下しにくいです。

インターネットの仕組みを理解するための主な基本用語

一般的なWi-Fiでは電波が弱くなったり途切れたりする状況でも、メッシュWi-Fiならカバーできることが多いです。複数の子機が連携して電波を広げる仕組みなので、必要に応じて子機を増やせば、ネットワークのカバー範囲や品質を調整しやすいのです。具体的な利用シーンとしては、以下が考えられます。

広い範囲をカバーしたい

メッシュWi-Fiは、子機同士が連携することで広範囲まで電波を届けられるのが特徴です。具体的な利用シーンとしては、オフィスや施設をはじめ、マンション、2階や3階建ての戸建て住宅などが適しています。従来型のWi-Fiではフロアや部屋によって通信が不安定になる可能性もありますが、メッシュWi-Fiならば隅々まで電波が行き届きます。

複数の端末を同時に使用したい

メッシュWi-Fiは通信の混雑に強いのが特徴であり、通信速度が接続端末の台数に影響されにくいです。複数のPCやスマートフォンなどを同時に使用しても通信が途切れにくく、快適なインターネット利用が可能です。そのため、以下のような方にはメッシュWi-Fiが向いています。

・家族や同僚と一緒に動画視聴や音楽鑑賞を楽しむ

・ゲーム機やプリンターなど、さまざまなネットワーク機器に接続する

・オンラインゲームやビデオ会議を複数人で行う

また、スマートホームのシステムを導入する場合も、メッシュWi-Fiは安定して管理しやすいのでおすすめです。スマート家電を使用する際には、家中どこにいても快適なネット利用が可能なメッシュWi-Fiを導入するのが良いでしょう。

Wi-Fiが届きにくいデッドゾーンがある

デッドゾーンとは、スマホやタブレットなどの端末がWi-Fi信号を受信できないエリアのことです。デッドゾーンが生じる原因はさまざまで、端末が通信範囲から外れることや、部屋の間取りの問題、障害物の有無、電波干渉などが考えられます。
メッシュWi-Fiを導入すれば、メインルーターと子機の間で無線通信を行うことで電波を届けやすくなり、デッドゾーンの解消に役立ちます。子機を増設することで、電波の届きにくい場所や階層もカバーしやすくなるのです。使用シーンの例としては、壁や家具などによって電波が遮られやすい建物、階段、窓際などが挙げられます。

メッシュWi-Fiのメリットとデメリット

メッシュWi-Fiを導入するメリットとデメリットをご紹介します。広いエリアでも安定した通信を維持できるといったメリットはありますが、費用や通信速度に関する注意点もチェックしておきましょう。

メッシュWi-Fiのメリット

メッシュWi-Fiの導入によって、以下の3つのメリットが期待できます。

・オフィスや施設、家全体で1つのネットワークを構築できる

・安定した電波の接続環境を維持しやすい

・専門的な知識がなくても設定や管理がしやすい

メッシュWi-Fiは、サテライトルーターを通して電波を広範囲に行き渡らせることができます。通信しやすいネットワークに自動的に切り替わる仕組みなので、手動での面倒な切り替えは不要です。また、網目のように張り巡らされたメッシュネットワークには、リスク分散の効果もあります。例えば、通信経路でトラブルが起こった際も、障害地点を迂回して通信を維持することが可能です。その他、セットアップが手軽であることも魅力だと言えます。ネットワークが1つなのでSSIDとパスワードは1つだけであり、製品によっては専用アプリケーションによる管理が可能となっています。

メッシュWi-Fiのデメリット

一方で、メッシュWi-Fiには、以下のようなデメリットがあります。

・メインルーターのみ使用する場合と比べて速度がやや落ちる

・使用する機器によっては、メインルーターと子機を同じメーカーで揃える必要がある

・ネットワークのカスタマイズが難しい

メッシュWi-Fiの場合、メインルーターに加えて子機の通信処理が必要であるため、通信速度がやや低下することがあります。そのため、接続するデバイスが少なければ、必ずしもメッシュWi-Fiが最適だとは言えません。使いたいデバイスが複数台ある場合に、メッシュWi-Fiの導入を検討するのが良いでしょう。また、設置範囲が広くなるほど、初期費用やランニングコストが高くなるのもデメリットです。ルーター1台あたりの価格は安くなく、さらに親機と子機は同じメーカーで統一する必要があります。他には、ネットワークのカスタマイズが難しいのも特徴です。初期設定は簡単に行えますが、詳細な設定はしづらいです。

メッシュWi-Fiの導入で安定したネット環境を構築しましょう

メッシュWi-Fiは、広域空間でインターネットを利用する場合や、複数のネットワーク機器を同時接続する場合に適した通信形態です。ユーザーが移動すると、自動的に適切なアクセスポイントに切り替えられるので、場所によって電波が弱くなるといった問題が解決できます。ご家庭での利用はもちろん、施設やオフィスなどの、さまざまなビジネスシーンでも役立つことでしょう。

ただし、設置範囲の広さによっては購入費・維持費がかさむリスクもあります。また、メッシュWi-Fiは最大通信速度(理論値)を引き上げたり高速通信を実現したりするものではなく、どこにいても途切れない安定性を追求したものです。つまり、通信速度が元の回線速度を超えることはないので、これらのデメリットも把握した上で購入することを推奨いたします。

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