00000JAPANとは?歴史から利用方法までを紹介【導入事例つき】 3分でわかる!無線LANミニ知識

2024年1月に発生した「令和6年能登半島地震」により被害を受けられた方々に対しまして、謹んでお見舞い申し上げます。

現代においてスマートフォンをはじめとするデジタル情報端末は人と人とをつなぐ大切なコミュニケーションツールとなりました。内閣府の消費動向調査によると2023年現在、スマートフォンの普及率は世帯ベースで89.9%と、ほぼ9割の家庭でスマートフォンを利用していることがわかりました。こうした背景を踏まえ、スマートフォン等は災害時においても、重要なコミュニケーションツールとなり、合わせてWi-Fi環境もそれを支える重要にインフラの一つとなり得ます。特に自然災害等が発生した際、携帯通信網がつながりづらい等が発生し、避難所や避難場所における通信インフラとしてWi-Fiは欠かせないモノになります。今回はそのWi-Fi環境の取組みとして、災害用統一SSID00000JAPAN」について、導入事例を交えてご紹介します。

00000JAPANとは?

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00000JAPANは一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会がガイドラインを制定し、運用しています。00000JAPANは災害発生時や通信回線の障害発生時に開放されるWi-FiSSID名で、ファイブゼロジャパンと呼びます。このSSID名称の背景には、接続時SSID一覧から探すときに上位に表示されやすくする工夫がなされています。

策定の背景

20113月に発生した東日本大震災では、被災地において携帯電話網も被害を受け、携帯電話が繋がらないことで安否確認が取れない、情報収集ができない、といったことがありました。このとき、各通信事業者が独自の取り組みとして、公衆無線LANサービスを開放することがありました。これを機に、災害発生時の公衆無線LANサービスの開放を目的とした取り組みが始まり、携帯電話事業者間の垣根を超えて利用できる災害統一用SSID00000JAPAN」が制定されました。

00000JAPANの利用

2016年4月に発生した熊本地震でも、携帯電話網への被害があり、完全復旧まで10日以上かかりました。このとき00000JAPANがはじめて運用され、九州全域の約55000箇所で通信事業者が提供している独自の無料Wi-Fiサービスが00000JAPANとして無料開放されました。通信障害から完全に復旧するまでの間に大きな効果を発揮したと報告がありました。また、台風や豪雨、土砂崩れなどの災害時に避難指示が発動したときにも00000JAPANは開放されました。

フルノシステムズでは防災Wi-Fiとしてソリューションを提供しています。

技術設定項目

00000JAPANを提供する場合、無線LANビジネス推進連絡会への利用申請をする必要があります。

利用にあたり、00000JAPAN提供の技術設定項目が規定されており、無線LANビジネス推進連絡会の会員は必須5項目、努力5項目の合計10項目を満たすことを望ましいとされています。

・パスワードを設定せず「オープン」なネットワークとして設定する(必須)

SSIDを隠蔽せず、どの機器からも識別可能とする(必須)

・利用時間の制限を持たせないようにする(必須)

・利用者認証の機能を利用せず、誰でも自由にアクセスできるようにする(必須)

・提供元の通信機器を問わず、誰でも自由に利用できるようにする(必須)

Wi-Fiの通信規格(IEEE802.11a/b/g/n/ac/その他)のうち、対応可能な通信規格すべてで通信できるようにする(努力)

2.4GHz帯・5GHz帯、両周波数帯で通信できるようにする(努力)

・同ネットワーク内に接続する端末間の通信ができないようにする(努力)

・通信元の回線が切断された場合、SSIDの送出を停止する(努力)

・通信速度の公平性を保てるよう、接続端末ごとの利用可能な帯域を公平に配分する(努力)

これらは災害時の利用となることから、利用する全ての人達が簡便に利用できるようアクセシビリティにも配慮した内容になっています。特に努力項目については、利用しているWi-Fi機器の導入時期によってその機能差異があり、その機能に対応していない機器もあることから上記のような運用となっています。

通信障害発生時にも利用可能に

20235月にガイドラインが改訂され、通信障害発生時にも00000JAPANが利用可能になりました。

キャリア通信網の障害が発生した場合、そのキャリアを利用している端末が通信できなくなる災害があり、皆さまの記憶にも新しいと思います。キャッシュレス決済やSNSの利用が普及してきたことがきっかけで、キャリア通信網の障害が発生したときの影響が少なくないので、そのような通信障害も災害に値するとの考え方で、団体が中心となり各通信キャリアが相互に補完する取組みをスタートしています。

利用の注意点

以上のように、00000JAPANは災害発生時のネットワークインフラとして大きな役割を担っています。その通信網を利用する場合、利用者として注意すべき点がありますので、以下に記します。

パスワード不要のオープンネットワーク

00000JAPANは緊急災害用のSSIDで、複雑な入力の手間を省くためパスワードを設定していません。そのため、簡単に利用できるという利点を逆手に取り、偽のSSIDを使って電波を傍受(盗聴)したり、悪意あるサイトに誘導したりして個人情報を抜き取られる恐れがあります。
最近はサイト側が暗号化されていることや閲覧するブラウザが不審なサイトには注意喚起をするケースも増えてきていますが、日頃から不審なメールは開かない、ブラウザから警告が出たらサイトの閲覧を中止する、OSやブラウザのアップデートを行うといったセキュリティ対策を心がけましょう。

一度に多くのアクセスがあると、速度が遅くなる

1つのアクセスポイントにアクセスが集中すると、速度は相対的に遅くなります。大きなサイズのファイルのダウンロードや長時間の動画閲覧などは本当に情報を必要とする人の通信速度を下げてしまう可能性があります。
避難所の多くはWI-FIのアクセスポイントが1台で運用されています。そのことから避難された方々のスマートフォン等の端末アクセスが集中すると、通信応答速度は相対的に遅くなります。大きいサイズのファイルをダウンロードする、長時間の動画閲覧などは他の利用者の方々に影響を及ぼすことになるので、節度ある利用を心掛けるようにしましょう。

ACERA導入の自治体における活用事例

岐阜県富加町様

岐阜県富加町では役場や公民館、学校などの公共施設に、災害発生時に開放される災害用統一SSID00000JAPANに対応するWi-Fiネットワーク基盤を導入し、20194月より運用を開始しました。直近では20238月の台風7号発生時に7施設、全29台のACERA00000JAPANによる公衆無線LANサービスの無料開放がありました。

岐阜県富加町役場

埼玉県戸田市様

埼玉県戸田市は00000JAPAN認定事業者として最初に認定された自治体です。平常時は『いいとだスポット』として市民向け公衆無線LANサービスを提供していますが、災害時は00000JAPANを利用することができます。「Wi-Fiモードセレクター」を活用し、201910月の台風19号発生時に00000JAPANを開放しました。

埼玉県戸田市役所

00000JAPANを導入している自治体は増えてきており、実際にモードセレクターを使った災害訓練の実施を行っていたり、庁舎の建て替えのタイミングで導入をしたりする自治体もあります。

フルノシステムズにできること

今やスマートフォンは私たちのライフラインとして欠かせないもののひとつになりました。日頃から何気なく使っているコミュニケーションツールでも、有事の際に使えなくなると大きな不安を覚えることでしょう。

ネットワークインフラを支え、00000JAPANのサービスを提供する企業として、少しでも多くの方にこの記事が目に留まり、関心を持っていただけたら幸いです。

被災地の一日もはやい復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。