NTT東日本 青森支店 様 IEEE802.11ahを活用した広域通信の実証実験 ~ネットワークカメラで撮影した映像をAI解析し混雑状況と人流を分析~
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無線ネットワーク導入の背景
夏祭りの代表格として全国に名をとどろかせている「ねぶた」は、青森県内の各地で毎年8月初旬におこなわれます。なかでも青森市内で開催される「青森ねぶた祭」には、ダイナミックなねぶたを目当てに多くの人々が全国各地から見物に訪れており、ねぶたの中でも最大規模のお祭りとして注目を集めています。
東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は地域の賑わい創出に寄与するため、60年以上にわたり青森ねぶた祭に参加してきました。青森ねぶた祭には毎年100万人を超える人々が訪れ、安心安全な祭りの運営には、会場の混雑状況や人の流れを正確に把握する必要がありました。
NTT東日本では、2023年度よりネットワークカメラの映像を用いた混雑状況と人の流れの観測・分析を目的とした実証実験に取り組んでいます。初回となる23年度の検証ではNTTドコモのLTE回線を利用し、ネットワークカメラで沿道の様子を撮影して映像データを送信する実験をおこないましたが、回線がひっ迫するなどの課題が生じ、改善策を検討していました。そのため24年度の第二回目の検証では、IoT通信基盤構築に適したWi-Fi規格である「IEEE802.11ah(別名:Wi-Fi HaLow™ )」を追加して検証することになりました。
実証実験をするにあたり、IEEE802.11ahに準拠するフルノシステムズのIoTゲートウェイ対応11ahアクセスポイント「ACERA(アセラ) 330」を採用し、青森ねぶた祭の会場の一部をカバーするネットワーク環境を整え、カメラを活用した観測を実施しました。
無線LAN導入における3つの課題
- 混雑時にもひっ迫しない通信規格
多くの観衆が訪れる会場において、実証実験を滞りなく進めることができるネットワーク環境が必要です。スマートフォンなどの使用で通信がひっ迫する可能性があるLTE回線の他に、実証実験専用のネットワークの構築が検討されました。 - 映像を伝送できる長距離通信規格
ねぶたの運行ルートは、青森市内の中心部、1周3キロメートル以上にもおよびます。できるだけ長距離通信が可能で、かつカメラで撮影した映像を伝送できるネットワーク基盤の構築が求められました。 - コストを抑えて構築できるネットワーク
LTE回線以外の通信基盤を構築するにあたり、街中に新たなネットワーク網を敷設するには大規模な工事が必要となり多額のコストと時間がかかってしまいます。コスト削減の観点から、アクセスポイントを設置しての無線環境の構築が検討されました。
システム概要
映像伝送が可能なIoTネットワークの構築に適したWi-Fi規格
◇ IEEE802.11ah対応のアクセスポイント
青森ねぶた祭の会場では、IoTのネットワーク構築に適した無線LAN通信規格であるIEEE802.11ahに準拠するフルノシステムズのIoTゲートウェイ対応11ahアクセスポイント「ACERA 330」を活用していただきました。長距離の通信に対応するほか、ネットワークカメラで撮影した映像をリアルタイムで伝送できることが、他のIoT通信規格とは異なる最大の特徴となっています。
◇ ビルと沿道にアクセスポイントを設置し11ahネットワークを構築
NTT東日本 青森支店が入居するビルにACERA 330のアクセスポイント親機を設置し、ネットワークのセンターとしての機能を持たせました。これに加えて、沿道の2か所にリピーター(中継機)を設置し、ねぶた祭の会場となる市街地に、数百メートルにおよぶ広域をカバーする無線ネットワーク環境を構築しました。
◇ ギガらくカメラで撮影した映像をAI解析
沿道の撮影には、NTT東日本のクラウド型防犯カメラ「ギガらくカメラ」を使用しました。ギガらくカメラはねぶた本体や「ハネト」と呼ばれる踊り手たちとともに運行する照明(投光器)のポールに、ACERA 330(ステーション)とあわせて取り付けられ、映像を撮影・伝送しました。撮影した映像は後日AI解析を施し、沿道の混雑状況と人流を分析して観測データを作成しました。
お客様の声
青森ねぶた祭とNTTとの関わりは長く、地域振興を目的として60年以上にわたり参加しています。現在はNTTグループとしてねぶたを毎年出しているという状況です。
当社の通信技術を活かし、ネットワークカメラを利用した混雑状況や人流の観測と分析を、2023年度より本格的に実施しています。昨年度はLTE回線のみを使った検証でしたが、大型ねぶたが運行する祭りのメインの日程が土日と重なってしまったこともあり、大変多くの方々が会場を訪れました。そのためLTE回線が非常に混雑する「輻輳状態」となり、ネットワークカメラの伝送やスタッフ間の連絡などに影響が出てしまったことから、二度目の検証となるこの度はLTEと並行してIEEE802.11ahを活用する運びとなりました。
実証実験を経た結果、11ahはかなり遠くに届く通信であると実感しました。ACERA 330を1台設置しただけでも半径300メートル程度の距離で映像が伝送できることがわかり、リピーターモードにすることで、さらに長距離の通信に対応できました。ネットワークカメラで撮影した映像は、高解像度までとはいかないまでも、AIを通して解析するには十分で、かつ人の目で見てもクリアな印象を受ける映像伝送が可能です。最小限のアクセスポイントの設置で長距離をカバーするネットワークを構築できる、11ahの特性とメリットを発揮できた検証になったと感じています。
NTT東日本とフルノシステムズは、これまでも全国各地で複数の実証実験を共同で実施してきました。ねぶたでも面白い相乗効果が出てくるのではないかと思い、今回の検証が実現しました。
地域の賑わい創出や安心安全なお祭りの運営には、弊社のソリューションで引き続き貢献していく方針です。イベントでの活用以外にも、さまざまな場面で11ahを利用できればと思います。11ahの持つ輻輳を受けにくいなどといったメリットを考慮し、今後もどのようなシーンで活用できるかアイデアをめぐらせ、地域循環型社会の実現に資するかたちを目指したいと考えています。
お客様情報
お客様名 |
[取材実施:2024年8月]
※本内容はすべて取材当時のものです。組織・部門・役職名、また仕様など、その後変更となっている場合があります。
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