「第3の場所」が僕にわたしに、教えてくれたもの -1
第一章:開発技術者Aさんの場合 第3の場所から学ぶ

まつひろ,川合良典,TEAM 3rd-place

働く人なら誰もが悩む、ワークライフバランス。どちらかに偏ることなく、仕事も私生活も充実しているに越したことはありませんよね。30代、40代、50代と年齢を重ねるにつれて、自身の置かれる立場や環境は変わるもの。人生の節目ごとに悩みと転機が訪れます。これからの働き方や日々の過ごし方を少しでも良くしていきたくて、転職や新たな挑戦への一歩を踏み出したい――そんな想いを抱えている人は、決して少なくないと思います。

30代を目前に控えたタイミングで、社外ワークショップなどの社外活動への参加に活路を見出した青年がいます。メーカーに勤務する組込みソフトウェア開発の技術者であるAさんは、27歳の頃、先輩技術者からの呼びかけで社外の組込み系技術者たちが集う合宿に参加しました。職場とは離れた環境で、仕事では直接関わりのない同業者たちとの交流や議論の機会を得たことで、Aさんの私生活と働き方への姿勢は変わっていきます。

27歳、疲労困憊。ホンキで「転職」を考えた

27歳当時、Aさんの心身の疲労はピークに達していたといいます。職場環境を変えるために、"転職"というワードが頭をよぎりました。家庭では双子が生まれ、育児に多大な労力を費やしていました。職場では任される業務も多くなり、複数のプロジェクトを責任ある立場で掛け持ちしていたことが原因だったようです。

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【Aさん】
「当時、疲労も相当たまっていたので、職場環境を変えるために転職をしようと思いました。しかし、不満を抱えている現状から逃れたい、そんな後ろ向きな理由で決意した転職が、果たしてうまくいくだろうか・・・そのように思ったので、転職という決断を踏みとどまりました。ただ、環境を変えて状況を良くしていきたいという思いは、常に心の中に持ち続けていましたね」

そんなAさんの日常に転機をもたらすきっかけとなったのが、社外活動への参加でした。

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会社の外へ~技術ワークショップへの参加

組込み系技術者としての確固たる"軸"を持っていたAさん。職場や家庭とは一線を画す"第三の場所"を得ることで、仕事とプライベートの両方にプラスの影響をもたらしていきます。

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【Aさん】
「先輩からの誘いで組込み系の技術者が集まる合宿に参加しました。状況も詳細もよくわからないまま参加したんですけど、参加者の中に知人がひとりいたのでホッとしましたね」

おもいきって踏み出した一歩により、Aさんの仕事に対する思いや私生活での時間の過ごし方が変わったといいます。ワークライフバランスの観点からみても、生活に良い循環が生まれるようになりました。

初めて参加したワークショップでのこと。せっかく参加したのだからとの思いもあって、Aさんはおもいきって自分の意見を述べてみることにしました。

せっかく来たから・・・?「発言」してみたら


【Aさん】
「初めて参加した合宿イベントのとき、議論の席で少し発言してみたんです。それがきっかけになって、分科会を仕切る担当にいきなり指名されました。あと、知らないうちに次回の合宿の実行委員会にも選ばれていて。気付けば、ひょんなことから参加したワークショップに、深く関わっていく立場になっていました」


後日談になりますが、Aさんはこの先、ワークショップの活動や運営に深く関わっていくことで、30~40代になる頃には、20代では感じられなかった充実感を得ることはもちろん、新たなプロジェクトを発展させて会社のビジネスに取り入れるという大役を果たすことになります――。

話は戻り、初めての合宿イベント参加で、見事に実行委員会に選ばれてしまったAさん。組込みシステム開発に携わる技術者がたくさん集まる会合に、より深く関るようになっていきます。二回目に参加したワークショップ合宿では、担当した分科会を、見事成功に導くことができました。


【Aさん】
「初めて分科会担当者として参加して、とてもテンションが上がっていました。合宿イベントを通して、今まで関わることのなかった他社の組込みシステム開発技術者たちとたくさん出会うことができましたし、自分の世界が広がるような感覚でした。組込み系技術者の出会い系イベントみたいで、名刺の消費スピードは爆上がりでしたね」


ワークショップの参加によるたくさんの人との出会いが、狭い世界にいた自分に気づくきっかけになったとAさんは振り返ります。イベントへの参加を機に、分科会を成功に導くことや、たくさんのメンバーと議論してプロジェクトを進行していくことの重要性に、改めて気付いたといいます。重ねた経験と新たな気付きにより、プロジェクトを達成する手段として、心理学やマネジメントに関する興味を深めていくことになります。

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第二章につづく