小学校にICT教育を導入するメリット・注意点とは?【実践事例付き】 3分でわかる!無線LANミニ知識

日本国内のインターネットの普及率が82.9%を超えている現在、インターネットやスマートフォンを活用した「ICT技術」の導入を検討する小学校も増加しています。ICT教育を導入することで、教員と生徒のどちらにとっても教育現場の環境をより良くできると期待されているのです。そこで今回は、GIGAスクール構想のように教育業界で注目が高まり続けているICT教育の概要と導入事例について解説します。

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ICT教育とは

ICT教育とは、教育現場にインターネット、パソコン、タブレット端末といった情報通信技術を導入して活用する取り組みを指します。ICTは「Informationand Communication Technology」の略称です。日本語では「情報通信技術」といい、主に「インターネットを通じて情報をやりとりする技術」を指します。
主にアナログなモノやコトで行っていた業務をICTによってデジタル化することによる「業務効率化」や「サービスの品質向上」、「セキュリティの確保」、「多様な働き方の実現」などを実現している企業や団体は少なくありません。小学校においても、教員の負担軽減やより分かりやすい授業の実現、児童のITリテラシー向上といった現場が抱える課題解決を図るために導入されています。

【参考】「令和3年度 文部科学白書/第11 ICTの活用の推進」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20220719-mxt_soseisk02-000024040_211.pdf

そもそもICTとは

ICTは「Information and Communication Technology」の略であり、日本語では「情報通信技術」と訳されます。「情報の通信技術」という意味の「ITInformation Technology)」としばしば混同されますが、厳密にはITは情報通信技術そのものであり、ICTは情報の共有や活用といった「情報の使い方」を指す言葉とされています。
情報の使い方の代表的な例としては、交通系ICカードやスマホアプリでの飛行機の予約、ビデオ会議といったインターネットなどを介して行われるをやりとりの多くは、ICT技術が活用されています。また、民間企業においてもビジネスの現場でICTの導入が進んでおり、「コミュニケーションの円滑化」、「サービスの品質向上(顧客満足度の向上)」、「生産性、業務効率の向上」などを実現しています。

【参考】「令和3年度 文部科学白書/第11 ICTの活用の推進」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20220719-mxt_soseisk02-000024040_211.pdf

小学校にICT教育を導入するメリット

小学校にICT教育を適切に導入すれば、教員や学校側と生徒がメリットを得られます。その代表的な3つの利点を紹介します。

児童の学習効率や意欲を高めやすい

電子黒板やパソコン、タブレットといった端末を小学校の教育現場に導入できれば、従来の紙では出力、制作できなかった画像や動画、音声などを用いた学習を採用しやすくなります。例えば、社会の授業で歴史などの映像学習を取り入れられるほか、算数の授業では三次元の図形を示しながら体積の求め方などを教えることができます。
このように、従来の授業では伝えることが困難だった視覚的、聴覚的な情報を伝達できる仕組みを構築できるのが小学校にICT教育を導入する大きなメリットです。また、児童の反応・発言を引き出しやすくなり、より主体的に学べる学習環境の構築にもつながります。その結果、学習に対する児童の興味や意欲を高める効果が期待できるのです。

個々の児童に合わせた学びを提供しやすい

一人ひとりの児童に学習進捗に合わせた教材を適切なタイミングで共有できるため、個々の児童に合わせた学びを提供しやすい環境を構築できるのも、小学校にICT教育を導入する大きなメリットといえるでしょう。各児童がタブレット端末などを所有し、デジタル教材を配布できる授業の仕組みを取り入れることで、小テストの結果や学習の理解度に合わせて柔軟に課題(宿題)を与えやすくなります。
その結果、従来の「教室での授業」という一律の時間と場所では是正が難しかった「学力格差」、「教育格差」の解消を図れると期待されているのです。また、さまざまな事情で学校や教室に登校できない児童に対しても、授業の動画を共有するなどして学習機会を設けることも可能です。
デジタル教材を一度作成すれば、共有や編集、管理も簡単なので児童に手厚い学習機会を提供しつつ、教員の教材作成の負担軽減の両立にもアプローチできるでしょう。

児童の協働学習を進めやすい

協働学習とは、生徒たちが1つのテーマに対して生徒同士はもちろん、地域の人や専門家などと協力し、課題を解決する学習法を指します。ICT教育を導入することで、各児童のタブレット端末で同じ資料、データを共有できるほか、検索エンジンを利用した調査、ビデオ会議やチャット・メールなどを活用することで海外の協力者ともつながり、テーマについて主体的、能動的に取り組めるようになります。協働学習を授業に組み込めれば、対話を通して協調性を育めるほか、成功体験も重ねられるのが大きなメリットです。
文部科学省もICTを最大限活用した「協働的な学び」を推進しており、新学習指導要領ではその定義も示されています。

■文部科学省における「協働的な学び」の定義と目的

探究的な学習や体験活動などを通じ、子供同士で、あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」を充実することも重要である。

※抜粋:文部科学省「学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料」

https://www.mext.go.jp/content/210330-mxt_kyoiku01-000013731_09.pdf

小学校にICT教育を導入する際の注意点

小学校にICT教育を導入すれば、授業はもちろん、学校運営そのものに大きなイノベーションを起こせます。一方、教育現場や学校の環境に合わせて適切にICT教育を導入しなければ、本来得られるはずのメリットを十分に享受できなくなる恐れもあります。その代表的な3つの注意点を紹介します。

導入・運用のために十分な予算が必要になる

ICT教育を導入するには、さまざまな機器や教材を揃えなければなりません。例えば、パソコンやタブレット、電子黒板、教育ソフトなどが挙げられます。児童や教員、一人ひとりにデバイスを配布するケースも珍しくないため、小学校の規模によっては非常に大きなコストがかかることも想定できます。
また、導入・運用するためには各端末の初期設定、セキュリティ対策などの作業も必要不可欠です。多くの小学校においては情報システム専門の学校職員や教員がいるケースは稀です。ICT教育の導入が担当職員の負担増大につながってしまうリスクを低減させるためにも、外部との協力も検討しながらスムーズに導入、運用する体制の構築も求められます。その際はある程度、運用コストが発生することも計画に組み込んでおくべきでしょう。
国は全国一律の学校のICT環境整備を目的とした「GIGAスクール構想」を打ち出しています。そのなかで校内通信ネットワーク整備事業と児童生徒11台端末の整備事業の2つの事業において、補助金制度も設けています。2023123日、同事業に関わる「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」の2年間延長が発表され、文部科学省は積極的な利活用を求めています。

【参考】「「GIGAスクール構想の実現」に関する補助事業の概要について」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20200219-mxt_syoto01-000003278_505.pdf

【出典】「令和5年度学校の ICT 化に向けた環境整備に係る地方財政措置について」
https://www.mext.go.jp/content/20230124-mxt_shuukyo01-000003278_001.pdf

児童の健康に留意しながらICT機器を活用する

「電子黒板の文字の見えにくさ」や「長時間のタブレットの使用」による児童の視力悪化のほか、タブレットの使用によって姿勢が悪くなど、ICT教育を導入する際は健康への悪影響にも対策が必要とされています。
文部科学省が公表している「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」では、カーテン、照明、画面への映り込みなどの配慮が必要と記載されています。各教室によって利用環境が異なるので、それぞれに適した対応が求められます。

【出典】「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/08/14/1408183_5.pdf

通信トラブル発生時の影響が大きい

GIGAスクール構想の主要な事業として明記されている通り、ICT教育を導入するには端末やデバイスだけでなく、小学校に「通信システム(機器)」を使った「校内通信ネットワーク(校内LAN)」を構築しなければなりません。校内通信ネットワークはICT教育が円滑に進められる通信環境のことで、GIGAスクール構想の仕様書や各学校の環境に応じて「無線LAN」や「サーバー」などを導入することで構築します。
ICT教育は、デバイスはもちろん、その基盤となる「校内通信ネットワーク」に不具合があり通信トラブルが発生した際、デジタル教材などを教員、生徒が使えなくなるため授業に大きな悪影響を与える恐れがあるのです。

小学校でのICT教育の実践事例

GIGAスクール構想が2018年から始まったことをきっかけとして、既に多くの小学校がICT教育を導入し、現場で実践しています。フルノシステムズも多数の教育機関に向けて無線LANWi-Fi)環境の整備を支援しています。その一例として「郡山市教育委員会のICT導入事例」について紹介します。

福島県の郡山市教育委員会は、児童が思う存分学べる教育環境の整備・充実を推進するため、2014年度にタブレット端末を35台購入にし、小中学校でICT教育について検証しました。児童生徒の学習の興味関心、集中力向上が期待できるというポジティブな結果が得られました。その結果を踏まえ、2015年度は小学校のコンピュータ室のパソコンをキーボード分離式のタブレット端末に変更して61校に1618台整備。さらに同時にネットワーク環境整備の一環として、Wi-Fi用のアクセスポイントを小学校に122台設置したのです。
フルノシステムズは無線LANの導入を支援し、現在もICT教育を導入した校内の無線LANやインターネットを活用した学習の活性化が進んでいます。フルノシステムズの無線LANを導入していただいた理由としては、「アクセスポイント全体の集中管理」と「IPマスカレード機能」、「豊富な導入実績」と「安定した通信環境の構築が可能」が挙げられています。

【参考リンク】
https://www.furunosystems.co.jp/experience/2016/04/000223/

小学校におけるICT教育の必要性はますます高まる

小学校におけるICT教育について解説しました。プログラミング教育が必修となるなど児童たちはもちろん、小学校の先生の残業や働き方が問題となっている今、学校運営における「ICT教育(教育ICT)」の必要性は今後、ますます高まると考えられます。ICTを使ったデジタル教科書やアクティブラーニング、オンライン授業の事例活用事例も徐々に増えつつあるので、まずは先行している小学校などの取り組みを確認してみてはいかがでしょうか。