社内ネットワークを構築するには?方法の手順と上手に進めるポイント 3分でわかる!無線LANミニ知識
近年のビジネス環境において、効率的な情報共有と円滑なコミュニケーションを実現するためには、適切な社内ネットワークの構築が不可欠です。特に働き方改革およびリモートワークの普及が進んだ現代では、安全で快適なリモートアクセス環境も整備する必要があるでしょう。
しかし、社内ネットワークに関する知識がなければ、ネットワーク障害や通信速度の遅延、情報漏洩などのリスクに晒されるおそれがあります。そこで今回は社内ネットワークの基礎知識や構築手順、注意点などについて解説します。
社内ネットワークの基礎知識
まずは社内ネットワークの意味と基本的な規格について説明します。
社内ネットワークとは?
社内ネットワークとは、社用PCやプリンター、データーサーバーといった社内のネットワーク機器同士を相互に接続するネットワークです。接続された機器は連携できるため、社員同士のスムーズなデータ共有やセキュアなやり取り、業務効率化に役立ちます。
社内ネットワークの基本的な規格
社内ネットワークの主な規格には、以下の4種類があります。
●有線LAN
LANは、同じフロア内や建物などの物理的な距離が近く限られた範囲で利用できる通信ネットワークを指します。そして有線LANとは、LANケーブルを使用してコンピュータやデバイスを接続するネットワーク形態です。一般的な有線LANの規格はイーサネットと呼ばれるもので、イーサネットの中でさらに転送レートに応じて1000BASE-Tや10GBASE-Tなどの規格に分かれます。
有線LANの主なメリットは、比較的安定した通信速度を確保しやすいことです。一方で、ケーブルの長さ不足や配線の複雑化といったトラブルが起こる可能性があります。
●無線LAN
無線LANとは、ケーブルを使用せずに無線通信を利用してデバイスをネットワークに接続する方式です。Wi-Fi規格が一般的ですが、Wi-Fiの中でも最大通信速度や周波数帯によって、さまざまな規格に分かれます。
無線LANはワイヤレス接続であるため、移動性や導入のしやすさが大きなメリットと言えるでしょう。また、ケーブルを差し込むLANポートも不要で、スマートフォンやタブレットなどのデバイスには簡単に接続できます。
一方で、電波干渉により通信速度が低下することがあるため、それを考慮して規格を選定しなければなりません。また、無線接続時のパスワード(暗号化キー)を設定していない場合、社外の人間がネットワークに侵入するリスクがあります。
●WAN
WAN(Wide Area Network)とは、本社と支社など物理的な距離が離れた拠点間を繋ぐためのネットワークです。広範囲の接続が可能な部分は通常のインターネットと似ていますが、WANは限られたユーザー(社員)だけが活用するのが特徴です。
●リモートアクセス(VPN・VDI)
リモートアクセスとは、自宅や外出先などの遠隔地から社内ネットワークにアクセスすることです。主な規格には「VPN」や「VDI」があります。これらの詳細は後述しますが、どちらもセキュリティ面に優れた技術です。
参考)【比較表】Wi-Fi7とは?いつから利用できる?4つの特徴や旧規格との違い
社内ネットワークを構築する手順
社内ネットワークの構築には、適切な手順と計画的な進行が欠かせません。安定したネットワーク環境を実現するためには、現状の課題を把握し、設計・構築・テスト・運用までの流れをしっかりと管理する必要があります。特に、セキュリティ対策や将来的な拡張性を考慮した設計を行うことで、長期間にわたって安定した運用が可能となります。
Step1.現状調査を行い、問題点の洗い出しを行う
まずは現状の社内ネットワークを調査し、構成や規模、問題点を洗い出します。問題点の例は、以下の通りです。
・拠点同士のファイル共有がしにくい
・通信量が多くアクセスしにくい時間帯がある
社内ネットワークを構築する目的を明確化し、コストの浪費を防止しましょう。
Step2.必要に基づいて設計を行う
洗い出した課題に優先順位を付けて、必要なネットワークや機能などの設計を進めましょう。例えば、特定の時間帯にアクセスしにくい場合は、ネットワーク機器の性能を見直し、社員数の増加に対応が必要な場合には、有線LANから無線LANへの切り替えを検討します。
なお、新たにネットワークを構築するケースでは、ネットワーク構成図を作成すると良いでしょう。状況を整理しやすく、担当部署以外の社員にも説明しやすくなります。
Step3.ネットワークの動作が正常かテストする
社内ネットワークの構築が完了したら、システムが正常に動作するかテストを行うことが重要です。テストを実施せずに運用を開始すると、後にトラブルが発生しやすくなるため、段階的に動作確認を行いましょう。
主なテスト方法には、以下のようなものがあります。
①単体テスト
各ネットワーク機器(ルーター、スイッチングハブ、アクセスポイントなど)が正常に動作するか個別に検証します。例えば、LANケーブルが正しく接続されているか、IPアドレスの割り当てが適切に行われているかなどを確認します。
②総合テスト
社内ネットワーク全体がスムーズに機能するかを確認します。例えば、各部署や拠点間の通信が正常に行えるか、Wi-Fiのカバー範囲や通信速度が想定通りかなどをテストします。また、複数の端末が同時に接続した場合の負荷も検証するとよいでしょう。
③導入テスト(ユーザー受け入れテスト)
実際の業務環境でネットワークを使用し、社員がスムーズに作業できるかを確認します。例えば、ファイルサーバーへのアクセス速度、クラウドサービスの動作やWeb会議システムの接続安定性などをテストし、問題があれば調整を行います。
Step4.運用マニュアルを作成する
各種システムの監視や、トラブル時の対応をメインとした運用マニュアルを整備します。システムごとに責任者やトラブルシューティングの方法を記載しておき、トラブル時に迅速な対応が行えるようにしましょう。運用ルールや管理方法をマニュアル化しておけば、担当者が変わってもスムーズな引き継ぎが可能となります。
参考)インターネットの接続方法や必要な準備、接続できない場合の対処法
社内ネットワークの構築に必要な機器
社内ネットワークを構築する際には、安定した通信環境を確保するための適切な機器の選定が欠かせません。ネットワークの規模や用途に応じて必要な機器を選ぶことで、業務の効率化やセキュリティの向上につながります。社内ネットワークを構成する主な機器として、サーバー、ルーター、ハブ、セキュリティ機器が挙げられます。加えて、ネットワークの品質を左右するLANケーブルや、Wi-Fi環境を整備するためのアクセスポイントも重要な役割を果たします。
ここでは、社内ネットワークの構築に必要な機器について解説します。
サーバー
サーバーとは、ファイルやメール、ホームページの情報を管理する機器です。ユーザーにさまざまな情報やサービスを提供できるので、社内ネットワークを構築するうえでは心臓部とも言える存在です。
サーバー内には社内情報が保存されている場合が多く、セキュリティ対策は欠かせません。そのため、社員のPCで利用するネットワークとは別のネットワークを用意して、ルーターを介して通信するのが一般的です。
ルーター
ルーターとは、PCやオフィス機器など、必要な機材をLANに接続するためのネットワーク機器です。有線・無線のいずれのネットワークにおいても、複数の端末に繋ぐにはルーターが必要になります。
なお、ルーターの種類には、有線LANルーター、無線LANルーター、モバイルWi-Fiルーター、ホームルーターがあります。
HUB(ハブ)
ハブとは、LANケーブルを繋いで複数の電子機器の相互通信を可能にする中継装置です。用途としては「LANケーブルでPCとルーターを繋ぐ」、「ルーターのポートが埋まってしまった際にポート数を増やす」といった場合が想定されます。
セキュリティ機器
セキュリティ機器とは、第三者による不正アクセスや攻撃から社内ネットワークを守るためのハードウェアです。サイバー攻撃の種類や数が増加した現代では、セキュリティ機器による対策は欠かせません。
なお、近年はさまざまな脅威に対して包括的なセキュリティ機能を有するUTM(Unified Threat Management)という手法が注目されています。
LANケーブル
LANケーブルは、有線ネットワークの構築に欠かせない通信ケーブルです。各ネットワーク機器を物理的に接続して、安定したデータ通信を実現します。LANケーブルの主な種類は以下の通りです。
・①ストレートケーブル:PCとルーター、ハブなど異なる機器を接続する際に使用
・②クロスケーブル(リバースケーブル):PC同士やスイッチ同士など、同じ種類の機器を直接接続する際に使用
LANケーブルには「CAT(カテゴリ)」という規格があり、数字が大きいほど通信速度が速くなります。社内ネットワークの構築では、最低でもCAT6以上のケーブルを使用すると、快適な通信環境を確保できます。また、契約しているインターネット回線の速度に適したケーブルを選ぶことが重要です。
アクセスポイント
アクセスポイントは、Wi-Fiの電波を送受信するための機器で、無線LAN環境を構築する際に必要になります。特に、ノートPC、タブレット、スマートフォンなどの無線接続が必要な端末が多い場合、アクセスポイントを適切に配置することで、ネットワークの利便性を向上できます。
アクセスポイントの役割は以下の通りです。
・無線LAN環境の構築:有線接続が難しいエリアにもWi-Fiを提供
・電波の拡張:広範囲のオフィスや多拠点の企業で、電波の届く範囲を広げる
・有線接続から無線接続への切り替え:LANケーブルが不要になり、オフィスのレイアウト変更が容易に
また、アクセスポイントの主な種類は以下の通りです。
・ブリッジタイプ:既存のルーターと接続し、Wi-Fiエリアを拡張する用途向け
・ルータータイプ:単体でインターネット接続が可能なタイプ(家庭用Wi-Fiルーターに多い)
アクセスポイントを導入する際は、設置場所や電波干渉、セキュリティ対策を考慮することが重要です。特に、広いオフィスでは複数のアクセスポイントを適切に配置し、電波の死角をなくすことが快適な通信環境を構築するポイントとなります。
社内ネットワークを構築する際の注意点
社内ネットワークを適切に構築することで、業務の効率化やセキュリティの向上が期待できます。しかし、誤った設計や機器の選定を行うと、通信速度の低下やセキュリティリスクの増大につながる可能性があります。ここでは、社内ネットワークを構築する際に注意すべきポイントを解説します。
会社に合う社内ネットワークの規格・機器を選ぶ
社内ネットワークの規格・機器を選定する際は、会社の運営体制・規模に合ったものを選ぶことが大切です。セッション数・トラフィック、必要な通信速度、ネットワーク利用状況などの情報を整理し、状況に合ったものを選びましょう。例えば、従業員が決められたデスクで仕事をする会社には有線LANが適しており、フリーアドレス制の会社には無線LANが便利です。
また、外部から社内ネットワークに接続する可能性があるなら、セキュリティ性が高い「VPN」や「VDI」を導入するほうが良いでしょう。
なお、VPNとはVirtual Private Network(仮想プライベートネットワーク)の略語で、安全性・セキュリティ面に優れた技術です。VPNはトンネルと呼ばれる仮想的な専用線を構築することで、ユーザーのプライバシー保護を強化できます。
次にVDIとは、Virtual Desktop Infrastructure(仮想デスクトップ基盤)の略語で、各デバイスのデスクトップ環境をサーバー上で一元管理する技術です。VDIはデバイス側にはデータが残らない仕組みなので、情報漏洩などのリスクを最小限に抑えることが可能です。
セキュリティ対策をしっかり行う
社内ネットワークのセキュリティ対策を見直し、外部の人間がアクセスできないようにセキュリティを強化します。
■セキュリティ対策の例
・無線LANの暗号化方式の設定
・パスワード認証
・ファイアウォールやUTM装置の設置
・クラウド型セキュリティサービスの導入
・ウイルス対策ソフトのインストール
必要に応じて、入退室管理システム・監視カメラシステムの構築も検討しましょう。
通信量に余裕を持たせる
通信量を十分に確保して、ネットワーク障害や通信速度の遅延が発生しないようにしましょう。また、Web会議の普及に伴って以前よりも企業ネットワークの通信量が増えている可能性もあるため、まずは現在の通信量を可視化することをおすすめします。
IPアドレスの重複は避ける
社内ネットワークを安定して運用するために、IPアドレスの重複は避けるようにしましょう。特に、同じIPアドレスが複数の機器に割り当てられると、ネットワークの接続障害や通信エラーの原因になるため、以下を実践しましょう。
・LAN内では、各デバイスにユニークなプライベートIPアドレスを割り当てる
・固定IPを使用する場合は、管理表を作成し、重複が起きないようにする
・DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を活用して、自動でIPアドレスを割り当てる設定にする
また、WAN接続を行う場合には、グローバルIPアドレスの適切な設定も必要です。ネットワークの種類に応じて、IPアドレスの運用ルールを決めておくと良いでしょう。
・契約回線にあったLANケーブルを選ぶ
LANケーブルの選定は、社内ネットワークの通信速度や安定性に影響を与えます。使用する回線やネットワーク環境に適したLANケーブルを選びましょう。ポイントは以下の通りです。
・LANケーブルには「CAT(カテゴリー)」という規格があり、CAT5e・CAT6・CAT6A・CAT7など種類が豊富
・通信速度やノイズ耐性は、CATの数字が大きいほど優れている
・契約しているインターネット回線の最大速度に適したLANケーブルを使用することで、ボトルネックを防ぐ
例えば、1Gbpsの高速回線を契約しているのにCAT5のケーブルを使用すると、十分な通信速度を発揮できません。高速通信が求められる環境では、CAT6A以上のケーブルを選ぶことが推奨されます。
社内ネットワーク構築業者の選び方
社内ネットワークの構築は、企業の業務効率やセキュリティを左右する重要な要素です。適切な業者を選定することで、安定したネットワーク環境を実現し、将来的な拡張やトラブルにも柔軟に対応できるようになります。以下に、社内ネットワーク構築業者を選ぶ際のポイントをまとめました。
自社の業種でネットワーク構築の実績があるか
業種によって、求められるネットワークの設計や機能は異なります。例えば、製造業では生産ラインとの連携が求められる一方、サービス業では顧客情報の管理が重要となります。そのため、自社と同じ業種でのネットワーク構築実績が豊富な業者を選ぶことで、業界特有の要件や課題を理解した上で最適な提案やサポートを受けることができます。
自社の規模に合ったサービスを提供しているか
企業の規模により、ネットワークの構築内容や必要な機器、セキュリティ対策は大きく変わります。小規模なオフィスと大規模な企業では、接続するデバイスの数やデータの流量、必要な帯域幅などが異なります。過去に自社と同等の規模のネットワーク構築経験がある業者を選ぶことで、スムーズな導入と運用が期待できます。
安全なネットワーク構築ができるか
業者が最新のセキュリティ技術や対策に精通しているか、過去の実績や提供するソリューションを確認しましょう。また、情報漏えいやウイルス感染、不正アクセスなどのリスクに対する具体的な対策や、万が一の際の対応策についても事前に確認しておくことが重要です。
サポート体制が十分な内容かどうか
トラブル時の迅速な対応や定期的なメンテナンス、技術的なサポートが受けられるかを確認しましょう。24時間365日のサポート体制や、専任の担当者がつくかどうかも、安定した運用を維持する上での重要なポイントとなります。
予算内に収まるプランを提案してくれるか
ネットワーク構築には、設計費用、機器購入費用、工事費用など、さまざまなコストが発生します。自社の予算内で、最適なプランを提案してくれる業者を選ぶことが重要です。複数の業者から見積もりを取り、費用対効果を比較検討することで、コストパフォーマンスの高い選択が可能となります。
最新のソリューションに精通しているか
IT技術は日々進化しており、ネットワーク構築においても最新の技術やソリューションを取り入れることで、効率性やセキュリティの向上が期待できます。業者が最新の技術動向を把握し、それを適切に提案・導入できるかを確認することで、将来的にも有用なネットワーク環境を構築することができます。
コミュニケーションを取りやすいか
業者との円滑なコミュニケーションは、プロジェクトの成功に直結します。要望や課題を的確に伝え、相手からの提案や説明を理解するためには、双方の信頼関係とスムーズなやり取りが不可欠です。担当者の対応の迅速さや、説明の分かりやすさなども、業者選定の際の重要な判断基準となります。
社内ネットワークの構築は業務効率化に必要不可欠
社内ネットワークの概要や具体的な構築手順などを解説しました。社内ネットワークの構築は業務効率や生産性の向上に役立つため、円滑な企業運営をするうえでの必須事項だと言えます。
ただし、企業の規模や抱えている問題点によって必要なネットワーク規格・機器などは異なるため、自社の現状を十分に把握してから取り組むことが大切です。例えば、拠点数や従業員が働く場所、トラフィック量、必要な通信速度などは整理しておきましょう。また、社内ネットワーク構築業者を選ぶ際は、本記事でご紹介したポイントを考慮し、選定しましょう。