医療におけるIoTとは?導入のメリットと課題、主な活用シーン 3分でわかる!無線LANミニ知識

あらゆるモノをインターネットに接続して情報をやり取りする「IoT」がさまざまな業界で注目されています。医療分野では「IoMT」とも呼ばれ、医療サービスの質や業務効率の向上が期待されており、すでに一部では導入も進んでいます。ここでは、医療分野におけるIoTの概要や導入のメリットと課題、実際の活用事例について解説します。

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医療のIoTIoMT)の基礎知識

はじめに、医療分野におけるIoTの基礎知識について解説します。

医療のIoTとは?

IoTInternet of Things)」とは、あらゆるモノがインターネットに接続され、相互に情報交換を行う仕組みです。従来は孤立していた製品や機器同士がインターネットを介して相互に情報をやり取りすることで、業務効率や利便性の向上につながります。

医療やヘルスケアに特化したIoTは、「IoMTInternet of Medical Things)」と呼ばれることもあります。

医療分野でIoTが注目される理由

医療分野でIoTが注目されている理由は、主に以下の3つです。

・遠隔医療のニーズ
・医療業界全体の効率化
・技術の進歩

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、医師と患者が対面せずとも診察や治療が受けられるサービスが期待されています。医療従事者の人手不足や、高齢化に伴う医療費の増大、離島やへき地の医療機関不足といった問題に対応するため、業界全体で効率化が求められているという背景もあります。こうした背景に対応できるテクノロジーが新たに登場していることも、医療分野でIoTが注目されている理由の1つです。

医療におけるICTについては以下の記事を参照ください。


医療におけるICT|必要性とメリット、現状の課題は?【導入事例付き】

医療現場にIoTを導入するメリットと課題

IoTには多くのメリットがありますが、課題も指摘されています。ここでは、医療現場にIoTを導入する主なメリットと課題について解説します。

主なメリット

医療現場にIoTを導入する主なメリットは、以下の通りです。

・オンライン診療を実現
・診察・治療の質を向上
・業務負担を軽減
・患者の自立を促進

IoTデバイスを通じてデータを取得でき、患者のPCやスマートフォンを利用して映像や画像を共有できるため、オンライン診療が実現できるというメリットがあります。診療情報や患者の血圧・心拍数といった情報を即座に共有できれば、より質の高い治療が提供できるようになるでしょう。

情報の管理も楽になるため、業務負担を大きく軽減できるのも、IoTのメリットの1つです。データの取得によるセルフケアにもつながるため、患者の自立を促す効果も期待されています。

主な課題

医療におけるIoT導入の主な課題として、以下が挙げられます。

・セキュリティ対策
・規格の統一
・導入時のコスト

インターネットを介した情報の送受信を行う以上、セキュリティ対策が欠かせません。医療分野は人命に関わるだけでなく、個人情報も多数扱っているため、慎重な対策が求められます。
医療分野では機器の標準規格が確立されていないケースもあり、IoT導入の妨げになる可能性も指摘されています。また、導入時にはIoT機器の導入やシステム構築、使い方についての研修等にもコストがかかりやすい、という課題も無視できません。

医療におけるIoTの活用方法

それでは、具体的にどのようなIoTの活用が医療において期待されているのでしょうか。ここでは、13の活用事例を紹介します。

遠隔診療支援

在宅でも専門医の診療を受けられる遠隔診療支援が注目されています。かかりつけ医がエコー映像や患部映像といった情報を専門医に共有し、専門医からの指示を受けながら診療にあたることが可能です。
救急搬送中の救急車と搬送先の病院との間で情報共有して受け入れ態勢を整えたり、手術中に院外の病理医と連携することで術中迅速診断を行えたりといったメリットも期待できます。

AI画像診断支援

AIの導入も期待されています。高解像度のデータを瞬時にやり取りするためには、IoTデバイスの導入や大規模なネットワーク構築が求められますが、実現すれば医師の診断精度向上や業務効率化が見込めるでしょう。

待合時間での診療前情報収集

医療機関の外来待合時間を有効活用し、診療前に情報収集を行う仕組みも注目されています。患者の顔色やバイタルデータを診療前にチェックすることで、対面での診察時間を減らし、感染症の予防や業務効率化といった効果が期待できます。

配送ロボット

薬や食事をロボットによって配送することで、人手不足や感染症予防への効果が期待できます。多くの人がいる院内を自走するロボットには、周囲の状況を正確に検知・分析する仕組みが必要です。IoTによって、配送ロボットの動きをサポートする仕組みが整えられるでしょう。

医療用ウェアラブルデバイス(スマートウェア)

呼吸や心電図、心拍数や体温といったバイタルサインを計測・転送できる「スマートウェア」も、市場の拡大が見込まれています。院内や在宅医療の場面で着衣するウェアラブル端末で、遠隔医療をサポートするデバイスとして期待されています。

手術支援ロボット

手術支援ロボットも、現在導入が進んでいる医療機器の1つです。外科医と同じ手術室内で操作できるロボットだけでなく、遠隔地にいる外科医が操作できるロボットの開発も進んでいます。

服薬サポート

服薬をサポートするIoT機器も開発されています。服薬すべき時間にライトを点灯させて患者に知らせ、服薬を患者の家族に通知する仕組みになっており、確実な服薬をサポートできます。

患者見守りシステム

院内の患者の安全確保には注意が必要ですが、患者全員の行動を監視するのは簡単ではありません。患者の位置情報をチェックして移動履歴を管理し、見守るシステムの導入が期待されています。

緊急応答システム

患者に緊急の対応が必要になった場合、すぐに介護者や医療従事者の助けを求められるようなウェアラブルデバイスも注目されています。特に高齢の患者など、自由に身動きがとれない患者の安全を守れます。

スマートピル

スマートピルは、今までにないタイプのIoTデバイスです。患者が飲み込むことで体内の情報を収集したり、薬剤を送達したりといった役割があります。近年注目が集まっており、市場も拡大しています。

ポイントオブケアデバイス

「ポイントオブケア」とは、患者のすぐそばで迅速に検査を実施したり、処置を施したりといった医療行為を指します。ポイントオブケアデバイスは、検査室以外の場所でも診断が実施できるようにサポートする仕組みです。

医療機器モニタリング

医療機器の場所や使用状況といった情報を検知し、より効率的に医療機器を活用する仕組みも注目されています。管理コストを削減でき、より適切なタイミングで医療機器を活用できます。

看護行動認識

医療従事者の人手不足などが要因となり、看護師の心身の負担が問題視されています。看護師の身体的負担やストレスなどをチェック、ケアする仕組みとして、各種センサーの導入が検討されています。

医療のIoTを支えるアクセスポイントの導入事例

IoTの導入には、大規模なネットワークの構築が欠かせません。ここでは、医療のIoTを支えるアクセスポイントの導入事例を解説します。

有馬温泉病院の導入事例

有馬温泉病院は、院内システム・電子カルテの稼働を支える無線LANアクセスポイント「ACERA(アセラ)1110」を多数設置しました。患者とスタッフをつなぐコミュニケーションツール「楽コール・システム」を導入しており、動画機能を使って円滑なコミュニケーションを実現しています。全館でWi-Fiが使える環境が整っているため、スタッフが院内のあらゆる場所でPC業務を行えるようになりました。

有馬温泉病院 様

沖縄県立八重山病院の導入事例

沖縄県八重山病院は、医療データの一元化による「ドクター処方のリアルタイム化」や、離島ならではの地理的リスクを軽減するため、電子カルテ業務に適切かつ安定したネットワーク環境を構築しています。無線LAN管理システム「UNIFAS」と無線アクセスポイント「ACERA」を導入し、安定かつ高速のネットワークを実現しました。

沖縄県立八重山病院 様

きらめきデンタルランドの導入事例

愛知県の歯科医院「きらめきデンタルランド」では、20台以上の端末による電子カルテシステムへの同時接続を実現するために、安定した高速ネットワークの構築が求められていました。

クラウド型の無線ネットワーク管理システム「UNIFASクラウド」を用いたアクセスポイント管理と、高速通信規格であるWi-Fi6に対応した「ACERA1310」を施設内に設置し、安定したネットワーク環境を実現しています。

きらめきデンタルランド 様

IoMTの導入で医療サービスの品質向上を目指す

「モノのインターネット」を意味するIoTは、医療分野でも注目されています。より高品質な医療サービスを効率的に提供するために、IoTの導入は今後も医療業界全体で進んでいくでしょう。
IoTの導入には、セキュリティやコストなど、解決すべき問題も指摘されていますが、幅広い活用事例も報告されており、医療分野全体の発展への貢献が期待されます。医療分野でIoTの導入を検討している方は、ネットワーク環境の整備についても検討を重ねてみてください。